【国見英】ねぇ、国見くん。【短編集】

カウントダウン ページ17

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「…なんかいい匂いする」

ふたりで教室で文化祭に使うお花を作っていると、突然国見くんがそんなことを言い出した。




「…そう？わかんないなぁ……教室の匂いなんて好きなの、国見くん？」

「あはは、違うよ。何だろう…なんか、蜂蜜みたいな、」


あ、もしかして。

「わたしかも」

「蜂蜜の匂いのハンドクリーム使ってるんだ、ほら、今の時期って乾燥するから。いい香りでしょ？」


ふうん、と言う国見くんに使ってみる？と鞄を漁ろうとする。




「や、いいよ」

「え」

「…あー…これ、この匂い。……俺これ、好き」


わたしの手を引っ張って顔に近付けた国見くんが、もう、なんていうか。



「っは、恥ずかしい…から、やめて、くれる？？」

残った片方の手でなるべく顔を隠して、苦し紛れに言ったけど、国見くんには伝わらなかったよう。


「ふふ、もしかして照れてる？？」

どうやら今日の国見くんは機嫌が宜しいようだ。長い指でくるくるとわたしの指をいじり、わたしの反応をみて笑っている。


「く、っ、国見くんは、自分がかっこいいってこと、自覚したほうが良いとおもう！！」


何言ってんだわたし。思わずがた、と立ち上がって言ってしまった言葉を、今すぐ取り消したかった。

気付けば手は離されていて、目の前で国見くんが身体を折り曲げてくっくっく、と笑っている。


もう恥ずかしくて居たたまれなくて、むすっとしたままお花作りを再開する。

「ごめんって」


また手が取られたと思えば、ぺろ、と指を舐められて、また、国見くんの思い通り。


「やっぱこの匂い、ほんと好き」


愛おしそうに見つめられれば、わたしの心はノックアウト寸前。




(わたしたち、恋人同士でもないのに！！)

(じゃあ、今からなっちゃう？)

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