歳相応 ページ28
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「A、自分で言ったよね。見た目じゃないって。中身のオレが好きだから、声や匂いが好きなんだって」
あ…。
「オレもおんなじ。中身がAだから」
「和也…」
「Aの唇だから好き。Aの目だから好き。
アナタを感じられるひとつひとつが、オレにとってすんごい特別で大事なの」
ほーんとバカだねーと苦笑混じりに左手を引かれ、胸の中に閉じ込められた。
「歳相応に人が変化していくのは自然の摂理でしょ。
サイボーグじゃないんだからさ、いつまでも若さに溢れてたら却って不自然だわ(笑)。それ売りにしてるタレントさんってならわかるけど、ふつーの人がそんなだったらコワくない？
何事もね、自然が一番なんだよ」
人は30歳過ぎたら人間的魅力が増すんだーってアナタ自分で言ってたじゃん…と、髪に顔を埋めて。
響く声に甘く諭される。
「性的魅力なんてのも歳相応に変化して当然。
若いうちだからこその魅力ってのは確かにあんだと思うけど、歳食って経験を積んだからこその魅力ってのもまたあんでしょーよ。男女問わず。オマエもオレも」
…ああ。
もう…
また涙が滲んでくる。
「更に言うなら、何に魅力を感じるのか性的嗜好なんてのも歳相応に変わんだから。
お互いにそん時がドンピシャ同士ってことなら何の問題もないじゃん。むしろそん時って我々どんな感じなのか、すっげ楽しみだと思わない？」
可笑しそうにクックックと肩を揺らすこの人に…私はやっぱり敵わない。
「そもそもAが挙げたことって、所詮は外側の話。中身じゃなくて入れ物、目に見えてる即物的な一側面にしか過ぎないよね。
オマエはオレがそんなつまんない基準で人生の契約相手選ぶと思ってんの？舐めてんじゃないよ！」
「…え」
「オレが欲しいのはAの中身」
和也が言い切った。
「どんな入れ物でも丸ごとAが欲しい」
「…35年後…の私だったとしても…？」
「何年後だろーと何歳だろーと、オレはAじゃなきゃヤなの。
一般論とか他人の評価とか、最早そんなのどーでもいいんだって。オレにはオマエしか居ないっつってんだよ！」
「う…」
涙で視界が揺らぎ、どんな顔をしていいかわからない。
頭を胸に抱え込むように抱き直されて、ホッとしたのもつかの間、
「それにね、オレ、逆に見たいと思ってんの」
くふふ…と悪戯っぽく笑われた。
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作者名：kico
| 作成日時：2019年5月30日 12時
