ブーメラン ページ27
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「えっと、10年？20年？もっとだっけ？…じゃあ、長く見積もって…そーだな、35年。
仮に、Aが戻って来れるのが35年後だったとして考えてみようじゃないよ。Aが65で、オレが64」
65歳か…
その頃の私は、もう…きっと…。
「えーっと、なんだっけ？『白髪で皺も増えて』…あとは？」
上を向いた和也が、んー…と顔を顰めてる。
「ほら、アレだよ…Aが言ってた“男がパートナーに求めるもの”ってやつ…。
んーと…あーそうそう、『若さ』と『性的魅力』っつったよね？」
「…うん」
小さく頷くと、「ふーん」と他人事みたいに笑われた。
「んじゃー訊くよ。Aはオレが自分の何に惚れてると思ってんの？」
「……」
そんなこと…
改めて考えてことがないから、わかんないよ…。
「オレはね…」
ふふんと笑う和也の左手が伸びてきて、困る私の口唇に親指でそっと触れた。
「このやわっかい唇も好きだし…オレを映してウルウルしてる透き通った瞳も好きなの。オレの名前を呼ぶ声なんてすげー好き…」
「っ…」
だめだ…
今そんなこと言われたら…
また新しい涙が盛り上がると、こらえきれずにほろっと落ちた。
「すぐ涙をこらえようとするところも好きだしー、こーして我慢できずに零れちゃう涙も好き」
和也は笑いながらまたタオルで私の頬の涙をごしごし拭くと、そっと左手を取った。
「すべすべした白い肌も。ほっそい肩も。この可愛い手も指先も全部好きだなー」
「う…」
“好き”だなんて言葉を、和也からこんなにたくさん一度にもらえたのは初めてだ。
…ありがとう。
とっても嬉しいけれど…。
やっぱり、それって、ここに居るのが今の30歳の私だから。
もし東京に戻って来るのが本当に35年後だったとすれば、もうその頃の私なんて、きっと…
「“…きっと、35年後の私は、和也が好きだと言ってくれたものなんて全部失っちゃってるかもしれないんだよ”…って。Aはそう思ってんだよね」
「…！」
心の中で思ったことが和也の声で聞こえて、驚いて顔を上げた。
「いつも言ってんじゃん。Aの考えてることなんてお見通しなんだって」
和也がニヤリと口角を上げる。
「でも、それブーメランだから」
「…え？」
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作者名：kico
| 作成日時：2019年5月30日 12時
