00:友の心を継ぎに。 ページ3
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「お前か。上弦を生かすように図らったという鬼は」
「出過ぎた真似をし申し訳ありません。このままでは鬼舞辻様の貴重な戦力が削がれてしまうと思い居ても立っても居られず、恥を忍び人間共からの撤退をご提案させていただきました」
「ほう?羞恥という観念は持っていたのか」
「…はい。ですが私の勝手な判断で割って入って良い問題ではなかったと心より反省しております。どうぞ、私の首をお斬りくださいませ」
嫌に反響する声。
それは空間を空間として認識させない場所だからか。それとも、あまりの恐怖心にそのように聴こえてしまっているのか。
鬼には到底判断ができなかった。
無限列車での一件を終え、なるべくに目立たずに鳴りを潜めていたはずがある日突然、ここ無限城への呼びだし…という悲しくも恐れ多いこの現状。
この場にいるのは、琵琶を抱える鬼、そしてこの物語の主人公たる下弦の陸を預かりし鬼。
そして、それらすべてを統括する鬼。即ち、鬼舞辻無惨というわけだが。
恐怖心を凛とした声に。
それでいて心の中まで空っぽに。でなくては殺される。
それは、以前散っていた他の下弦たちから学び得たもの。だからこそ、決してこの方にだけは嫌われてはならず逆に目をつけられてはならないと再認識したからだ。
本当は殺されたくはない。
だけど、この場でそんなことを主張したところで受け入れられることの方が難しい。
漸く記憶も取り戻し、そして亡き
そう、到底こんなところで死ぬわけにはいかない。
これは賭けだ。
丁がでるか半がでるか。生がでるか死がでるか。
ただただ頭を深々とそれでいて丁寧に畳へとこすりつけ相手の反応を待つこと少し。
漸くして降るその声は先程のものから多少威圧感が薄れたと感じるのは楽観視しすぎだろうか。
「雅楽」
「はい、無惨様」
震えそうな手は畳へとこれでもかと押し付け、ぎゅっと目を閉じる。
「顔をあげろ」
「失礼致します」
顔を上げ、通わせる瞳はそれだけで全身が震えあがりそうで今にも逃げたくなる衝動に駆られる。それほどにこの方が恐ろしい。
だが決して悟られないように。真っすぐと見据えれば、頬に触れられる手がいやに冷たかったことはきっとこの先も忘れられないだろう。
「お前にこの数字を与えてやろう」
直後走る瞳の激痛。
懐かしい感覚…新たに刻まれる呪いの数字。
刻まれた数字は言うまでもなく――。
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