14:事件 ページ14
A「…………今日は、いらないって、はっきりと言ったはずですが…。」
「そうだっけ?」
あれから毎回、先輩はバイト後に私を家まで送るようになった。
" いらない "
" かえってこっちが迷惑 "
と、どれだけ言葉ぶつけても、笑顔を絶やさず送ってくる。
A「先輩がストーカーになってどうするんですか。」
「誰かもわからないストーカーよりかはいいでしょ。ほら帰るよ。」
大きなため息をわざとらしく吐きながら、帰り道を歩き始める。
こうなったらもう早くストーカーをつきとめた方がいいのではないだろうか。
いつまでもこんなことをしてもらう訳にはいかない。
「……A?」
A「はい?」
「スマホ、鳴ってるよ。」
そう言われてハッとする。
カバンの奥底でスマホの振動が響いていた。
振動が数回で終わらないため、電話か何かだろう。
慌ててカバンから取り出し、画面を見る。
" シェリーさん(大家) "という文字が並んでいて、さらに頭の中には疑問が浮かぶ。
自分の借りてるアパートの大家さんのシェリーさん。
気のいいおばさんで、よくご飯のおすそ分けとかをくれる。
住人の中ではよく話をする人だが、こんなふうに電話で連絡をされたことは今までで一度もない。
A「はい、もしも──」
" あっ!!やっとでた!!Aちゃん、大変なのよ!!"
甲高い大きな声が鼓膜にダイレクトにぶつかり、思わずスマホを遠ざけた。
しかしなんだかただ事ではない様子で、声が上ずって慌てているようだった。
A「どうしたんですか。」
" あ、あのね、落ち着いて聞いてね、実は───…… "
私はその言葉の先を聞いて、唖然とした。
思わずスマホを落としかけたし、夢なんじゃないかと思った。
だって誰も思わないだろう。
" 家が燃えてる " なんて。
A「な、何言って…」
" 今、警察と消防の方が来ててね、みんなの安否確認してたの。幸い、205号室の主婦さんが変な匂いに気づいて、みんな避難できたからよかったんだけど、Aちゃんだけ連絡取れなかったから…あー…、よかったぁ…"
心底安心したような安堵の息が、電話越しに聞こえてくる。
A「え、それどういう…」
" え?だから、あの火事の中にいるんじゃないかって…"
A「ちょ、ちょっと待ってください。もしかして、発火元って──…」
" 私の部屋ですか "
大家さんの言葉を聞くのが怖くなった。
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作者名:楼 | 作成日時:2022年9月15日 22時