６. ＊＊＊＊＊ ページ6
「はい、いちさん」
「んえ？？」
大きな鍋いっぱいのカレーが跡形もなく無くなり
五郎御用達の美味しいコーヒーと一郎お手製のケーキを楽しんでいたとき。
「そろそろ新しいのね」
四郎が渡した贈り物に、一郎が目を見開く。
「俺からはこれ。今度一緒に観よう」
「俺はこれ！！愛いっぱい込めたからっ！！」
大きな大きな紙袋三つ。
いつも特に隠していないからとっくにバレていてもいいはずなのに、毎年毎年、心の底から驚く一郎。
もらえる、を前提に考えていない一郎にとっては
毎年騙し討ちみたいなのかもしれないけど
一郎のそんなところが
「......ありがとう...」
そしてそれぞれの贈り物を大切そうに胸に抱き、嬉しそうに笑ってくれてるその姿がもう、兄弟たちにとっては愛おしくてたまらない。
そしてそれは一郎にとっても。
「じろちゃんね、いっぱい考えたんだって」
「フォルダーとかも作って」
「寝言でも言ってたし」
しゅんと肩を落とす二郎と自分、二人の顔を交互に見ながら
あのねえっとねと、二郎の頑張りを力説する三人が。
こんなことで一郎が怒るはずもないこと
ましてやケチだのなんだの、そんな気持ちには微塵もならないことはちゃんと、知ってるだろうに。
それでもこうやって
兄である二郎のことをいっせいに庇い始めるのがもう
愛おしくてたまらない。
「じろ」
愛おしいなぁ...
何の淀みもなく、そう思う。
「あのね、じかん、ちょうだい？」
「...え？」
愛おしい、守りたい
何の迷いもなく、そう思う。
「いちじかん。じろと過ごす時間」
空っぽになったカレー鍋は、亡くなった母がずっと、使っていたもの。
鍋いっぱいに作っても一瞬で無くなると話していた母はいつも、幸せそうに笑っていたこと、覚えてる。
「...だめ？」
「ううん...ううん！！」
母親にはなれない。
代わりが出来るなんて、思ったこともない。
それでもきっと、母はこんな気持ちだったのだろうと、それだけは分かる。
そして。
今自分自身が抱く兄弟たちへの想いと同じ想いを、抱いてくれてたことも、分かる。
一年に一度。２月の14日。それは
愛されていることを知る日。
そして。
愛していることを、知る日。
「よかったねじろちゃん」
「うぅー」
「ハイ泣かない泣かない」
舞賀家のバレンタインデーは今年も、賑やかに過ぎていきます。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 650人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
マナ - 作者さんに質問です。あなたは茨城県北茨城市磯原町の出身、または住んでいますか？ (2021年11月27日 20時) (
レス) @page1 id: 8df98fa480 (このIDを非表示/違反報告)
檸檬(プロフ) - こんにちは。その後が気になっています。また、お時間あるときに続きをお願いします。 (2021年7月17日 17時) (レス) id: d5f4de7f1a (このIDを非表示/違反報告)
あっちゃん(プロフ) - ううっっ！ いちくーん。以上心の叫びでした。きっとこの先に幸せな未来が来るんだよね？ね？ね？心静かに待ちます。 (2021年1月14日 15時) (レス) id: 178db8b66c (このIDを非表示/違反報告)
みーこ(プロフ) - そか、マイガールだから、舞賀家か〜....なるほどぉ. (2020年8月13日 18時) (レス) id: 84fdbed2f6 (このIDを非表示/違反報告)
mio(プロフ) - あっちゃんさん» 続)「うちのいっちゃん」なあの写真を想像しながら書いてるよ。なかなか筆が進まないことも多いけど、読んでくれたら嬉しいです。本当にありがとう！！ (2020年8月7日 14時) (レス) id: 075ae85cbe (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：mio
| 作成日時：2020年3月12日 0時
