1曲目 ページ3
何の準備も事前のアポも取っていなかったにもかかわらず、すんなりと応接室に通されてビビっていると、社長と思わしき割腹のいい男性が入ってくる。
その圧に、思わず立ち上がり、深深と礼をすると、「座っていいよ!」と、以外にも軽い感じで話しかけてくれた。
業界では知らない人はいない大物社長。
彼が手がけたアーティストは紅白の常連だし、CDの売れないこの時代にミリオンヒットを飛ばしまくっている。
そんな大物を前に、さすがの私も緊張していたが、これだけは言わねばと、意を決して立ち上がった。
「私をosculumに入れてください!!」
当然何を言っているのか分からないというような顔で、こちらをぽかんと見ている社長に続けざまにこう言った。
「私はosculumに入りたいんです。他のユニットじゃなく、ソロでデビューしたい訳でもなく、osculumに!そこが自分の居場所だと感じるから!」
さすがにヤバいやつだと思われて追い出されるかもしれない。
だってこの事務所には暗黙のルールがある。どんなにメンバーが減ったとしても途中で加入はさせない。ましてやosculumはそもそもデビュー前からメンバーが変わっていない数少ないグループだ。
そのルールを無視して自分を入れろって言ってるわけだからかなりヤバいやつだと思われても仕方がない。
「んー。正直この段階では君を入れるメリットを感じないんだよねぇ。…うーん、ちょっと待っててね。」
少し悩んだ社長はそれだけ言って部屋を出ると数分して帰ってきた。
「おまたせ。ちょっと移動しようか。」
私が案内されたのはスタジオみたいな部屋だった。なるほど…実技テストって事ね…
「じゃあなんでもいいからosculumの曲を歌って踊ってみてくれる?あ!もちろんフルコーラスでね!」
ずっとosculumの曲を練習してきた私は振りも歌詞も完璧に覚えていた。でも、この体は…本当に私のものなのだろうか…筋肉も程よくついているし、身長も変わってないから大丈夫だと思いたい。
でも声も低くなったし、ちゃんと歌えるのか不安だ…
私は自分が1番好きでめちゃくちゃ練習していた曲を選択し、パフォーマンスをはじめた
思っていたよりも動きやすい
声もいい感じに伸びている
男性にしては気持ち高めの甘い歌声、筋肉の増加によるキレのあるダンス…
自画自賛になってしまうが、かなりレベル高いんじゃ…
1曲踊り終わってもほとんど汗もかいてないし、息も上がっていなかった。
え、何この体…チートなの??
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作者名:加藤絆 | 作成日時:2021年6月1日 18時