Kleinod Ⅴ (ページ20)

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小ぶりな作りになっている部屋を歩き回って、ワンゲームしたり軽く酒を煽ったりしながら高地の姿を探す。
何分経ったかはわからないが、奥の方にあるルーレットの部屋へと入った時、自分の願望通り高地の姿を見つけた。
きっちり変装して、バーカウンターで誰かとやり取りしている「彼」は、自分の姿に気付いても流石詐欺師といったところ、特に反応する様子はない。
じゃあ何故わかったのかと聞かれれば…そう、強いて言うなら、どこどなく「俺」と似ている空気を感じたからだろうか。

自分は気付いていないフリをして、カウンターから少し離れたところでシャンパンを注文する。
そしてそのまま煙草に火を着けて――煙に、花蜜を混ぜた。
(あぁ、あまりにもおかしくてどうにかなってしまいそう！)

小ぶりな作りの部屋では、換気をしているとはいえ毒もすぐに回る。
最初に気付いたのはウェイターだっただろうか。
感覚が鈍って立てなくなる者、多く吸いすぎて胸を押さえる者。
まあこれくらいにしておこうか、あまりにも増やすと、お楽しみがなくなってしまう。

逃げようとした高地の足を引っかけて、その腕を掴む。
《ねぇ、逃げないでよ》
そう自分が言葉を発せば、彼は取り繕ったような笑みを浮かべ、
「何か私に御用で？」
なんて他人のフリをする。

《今更他人のフリなんて出来ると思ってんの？ねぇ、わかってるでしょ、「高地優吾」さん？》
挑発するように言葉を述べて、彼の顔が疑念に揺れた瞬間を狙って捻じ伏せた。
「お前…樹じゃない、」
《ふは、流石。演じ手サマにはすぐバレるねぇ》
「樹は、」
《まだ気持ちよく眠ってるよ。…あー、君の所為かもねぇ？》
そのまま近場にあった椅子に座らせ、忍ばせていた手錠を後ろ手に着ける。
高地は、じっとこちらの方を睨みつけていた。