Kleinod Ⅴ (ページ15)

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森本「樹！」
田中が目を覚ましたのは、松村が暴れる事なく放心状態になってから十数分と経った頃だった。
声になるかならないかくらいの呻き声をあげて、起き上がった田中はこちらをちら、と見ると「…わり」とだけ言葉を漏らす。

森本「もう！俺の事は気にしなくていいってば！」
田中「でも、」
森本「俺はこの通り元気だし！」
田中「…本当、悪かった」
森本「……？」
何だか、いつもよりも抱え込んでいる気がする。
最早違和と呼んでも差し支えない程に渋い顔をする田中に、森本はいつものように声をかける。

田中「…北斗、北斗はどう…いう状態？」
森本「高地の事話したら、ちょっと放心してるみたいで…」
田中「…そっか」
森本「ねぇ樹、どうしたの？いつもより「あれ」、酷いの？」
田中「……うん、ちょっと」
先程から歯切れの悪い様子の彼に、森本は懸命に話しかける。
何だか今のままの田中だと、ずっと違和が付き纏って仕方がないのだ。

京本「…2人、起きたの」
森本「あれ、きょも！」
ジェシーが説得しに行っているはずの京本が、端末片手に部屋へと入ってきた。
少し遅れて入ってきたジェシーは少し嬉しそう。あぁ、仲直りしたんだなぁ。

京本「全員に話あるんだけど」
そう言って京本は端末を机の上に差し出す。
依然心此処に在らずの松村は完全に警戒したように全員から距離を置いた。
京本「…」
軽く一瞥して、説得は時間の無駄だと判断したのか京本は松村を傍に呼ぼうとはせずに話を始めた。