Kleinod Ⅴ (ページ16)

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彼から聞かされたのは、上層部と交渉した末にまとまった「妥協案」だった。
3日の猶予と引き換えに、高地を連れ戻す事。さもなくば、
あんな事を言って、ジェシーに「現実」を突きつけようとしていても、結局は京本もこのまま「グループS」がなくなるのは嫌なんじゃん。
という事を思いつつも、本人に言ってしまえばきっと鉄拳が飛んできそうなので止めた。

京本「正直、分かれて探したいのが本音。でも北斗の事を考えたら、全員で探した方がいい。次また暴れられたら、この妥協案すらなくなると思うから」
田中「まぁ、それはそうだな」
ちらり、と田中が松村の方に視線を向ける。
使い物にならなくなったガラクタのように、何かをずっと呟いている松村を、単独行動させるのは危険な予感しかしない。

ジェシー「高地、また別の誰かになってるのかな？」
森本「きっと、なってると思う」
田中「でも、流石に高地の事はわかると思う。…てか、わかんなきゃいけないんだろ」
ジェシー「That's light」

京本「王都街の今日の入出記録にはそれと思しき人物はいなかったよ。だからもう今からでも探しに行った方がいい。明日王都街…や、Δ国にいるかどうかもわかんない」
森本「じゃあ行こう、早速行こう！」
ジェシーは松村の方に近付くと、優しく「高地の事探しに行こう」と声をかける。
小さく「…こーち、」と呟いてふらふらと部屋を出ていく松村を追って、5人は基地を出た。

森本「…樹」
田中「何？」
森本「本当、無理しないでね」
依然拭えない違和の原因に若干の不安を抱きつつも、ここで彼が大人しくお留守番などをしてくれる訳がないので慰み程度の声を漏らす。
田中「わかってるよ、ありがとう」
そう言って笑う彼の笑顔すらも、森本にはいつもと違って見えてしまった。