Kleinod Ⅴ (ページ3)

今日:11 hit、昨日:33 hit、合計:172,136 hit

＊ページ3

人気のない、静まり返った基地内を歩いていた。
田中の部屋は鍵がかかっていて入れなかった。
京本は情報室と高地の部屋を往ったり来たりして、話しかけ辛い。
森本は、姿を見せない。きっと今頃黙ってどこかで1人で処理しようとしているのだろうか。
静かで、とても怖い、この基地には自分しかいないんじゃないかって。

いつもあんなに賑やかな食堂も何故か今日はとても冷たく感じてしまう。
こっそりキッチンに入って、昨日の残りで置いてあったおかずを温めて食べるけど、1人じゃどうもご飯も美味しくなくて。
ジェシー「…みんな、バラバラになっちゃった」
そう呟いても慰めてくれる相手も笑い飛ばしてくれる相手もいない。

1人じゃ虚しくて心細くて、自室に入って布団の中に潜り込む。
ジェシー「…これからどうしたらいいの？」
ねぇこーち、俺たちこーちがいないとまともに活動出来ないよ。
だって、グループSは「6人」だもん。
「6人」じゃないと、意味がないんだよ。ねぇこーち、
ジェシー「…帰って来てよ…」

あの時どう声をかければ正解だった？
高地はずっと高地だ、って、明るく言えばよかったのだろうか？
彼が「高地優吾」じゃないとしても、今まで確かにずっと自分たちは「高地優吾」と接していた訳で、それを今更違う、なんて否定されても。
…このまま眠って、朝起きたらまたいつものような日常に戻っていればいいのに。

そう思いながら、瞳を閉じようとした刹那だった。
京本『待って、北斗が本部で暴走してる！』
無線の奥から、京本の声が聞こえ、ジェシーは跳ね起きた。