Kleinod Ⅴ (ページ13)

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ごそり、と何かが動く音がした。
森本が視線を向けると、松村の瞼が開かれていた。
反射的に動いた手が、腰元にあるはずの円月輪を探すように動く。
松村「…ない…」
その小さく呟かれた言葉に、目を赤くしたジェシーがこちらを向いた。

ジェシーは松村の元に歩くとそのまま彼を潰さんばかりの力で抱き締める。
松村「やだ、はなして、みんな、うらぎる、くせに…！」
ジェシー「裏切らない、みんな裏切らない、高地だって、裏切ってない…！」
松村「うそ、嘘！もう、しんじない、しんじないから…！」

彼の腕の中で何とか暴れようとする松村を懸命に抑え込むように抱き締める。
言い聞かせるように、完全に閉じられてしまったドアを優しく開けるように。
松村「やだ…！うらぎるなら、裏切るなら、初めから、なかよくしないで…やさしく、しないで！」
悲鳴交じりのその声は、最早誰かを信用する事を拒むような声であった。

森本「…ねぇ北斗、じゃあ、北斗は俺たちの事信用しなくていいよ」
ジェシー「しんたろ…？」
森本「北斗は俺たちの事信用しなくていい。でも俺たちは北斗の事信用してるから」
ジェシーを松村から引き剥がして、森本は彼から少し距離を取った。
森本「…北斗はこのままでいいの？高地に会えないままで、いいの？」
ジェシー「…慎太郎、」
森本「高地の事、探し出そうよ。…どうせ、もうここにはいられなさそうだし」
松村「こーち…？」

森本「…だって、俺だって、俺だって「6人」でいたいし…」
それまでのしっかりとした言葉とは裏腹に、酷く幼い、末っ子が駄々を捏ねるような言葉尻に、あぁ、彼はそういや年少者だったと気付かされる。
…最年少に、何やらせちゃってるんだろう。
ジェシー「…俺、大我の事説得してくる」
赤くなった目を擦って、部屋を出る。
どうせ彼の事だからきっと情報室にいるのだろう、彼はつい昨日の様に、明かりの漏れている情報室を開けて顔を覗かせた。