Kleinod Ⅳ (ページ35)

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高地「…言える訳ないじゃんか」
ジェシー「何で」
高地「俺がみんなを苦しめるきっかけになったのに、言える訳ないじゃんか」
森本「プロジェクトの事？それは、上層部から命令されただけで、」
高地「Dr.Eilの名前は？」
ジェシー「…やめてよ、こーち」
力なく笑う高地に、嫌でも受け入れないといけない事実を無理矢理飲み込まされるような錯覚を覚えた。

もし、高地が、エイル博士がそのプロジェクトの提案者で、「上層部からの命令」という事も「嘘」で、自分からやったのだと言うのなら、
大好きなグループのメンバーがやったと言うのなら。
自分たちは、こんな苦しい副作用を受けたこの怒りを、振り上げた拳をどこに降ろせばいい？

松村「……ね、ねぇ、高地、こーち、嘘だよね。冗談だよね。高地は俺に嘘つかないよね、裏切らないよね、嘘はつかないよ、って言ったから、」
それまで黙っていた松村の震えた音が響いた。
何とかして消化しようとしていたのだろうか。…こんな事、自分たちでも消化出来きれないと言うのに。
京本「ついてたんだよ。…高地は、ずっと。嘘ついて、」
松村「京本に聞いてない！」
張り上げた松村の声が耳に刺さった。

不意にその姿がいなくなったと思えば、松村は縋るように高地の腕を掴み、懸命に「嘘なんてついてないよね」と、日頃あんなに抑えようとしている感情を振り切るように問いかける。
高地「…北斗、」
縋る彼の手を握る事も目線を合わせる事もせずに、高地は酷く静かな声で言う。
高地「確かに俺は、北斗に「嘘はつかない、裏切らない」って言った。「高地優吾は松村北斗に嘘をつかない」。その言葉に何一つ偽りはないよ。…でもね、北斗、」

「ごめんね、「高地優吾」はいない。…どこにも、いないんだよ」

高地は、いや、彼は、落ち着き払った、どこか寂しげな声でそう言った。
回してしまった歯車に巻き込まれ、どうやらエンドロールへのチェスボードはポーンの駒を進めてしまったらしい。