Kleinod Ⅳ (ページ3)

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田中「ごめ、今のは、」
高地「また「あの子」がちょっかいだしているんでしょ？わかってるよ」
田中「…そんな、つもりじゃなくて、」
高地「ほら大丈夫、落ち着いて、深呼吸して、【正直に話してごらん】？」
自分の毒とはまた違った、甘い匂いを漂わせるような言葉だった。
バニラのような、されど森本の吸う煙草の匂い程甘ったるくない、丁度落ち着くような香りを漂わせるような、まさしく「甘言」たる言葉。

田中「…信じたい、んだけど、」
…あぁ、「扇動」使ってんだな、とぼんやり思いながらも従うように言葉を発してしまう自分はきっと弱い人間なのだろう。
高地「信じられないんだよね？」
導かれるように頷いた。「あれ」は呆れたように溜息をついている。
高地の反応が面白くないのだろうか、それともあっさり白状した「自分」が面白くないのだろうか。

田中「…ごめん」
高地「いいよ。樹は良く頭が回るから、北斗の仮説もちゃんと理解してそれで納得してるんだもんね」
なけなしの謝罪にも高地は一切声を荒げる事をせず、いつもと変わらぬ口調で問いかける。
松村「…違う、って証拠はあるの？高地」
高地「残念ながら、今はないな。だから2人にちゃんと違うって言えるように証拠を探し出さないとね」

何で仲間から疑われているのにこんなに優しく受け止めてくれるのだろう？
田中はそれが不思議でならない。
自分だったら、きっとショックで立ち直れなくなりそうだ。
ふと、視界に影が差した。
いつの間にか目の前に立っていた高地は、自分の首にかかっていたヘッドフォンを自分の両耳に当てた。