Kleinod (ページ26)

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松村「覗き見すんなよ」
高地「じゃあ見たいからもう1回踊ってよ」
松村「…1回だけね」
衣装を着ている訳でも装飾を着けている訳でもないが、ひらりひらりと舞うように踊る松村をソファから見つめる。

元々王宮の数少ない男性踊り子であった松村は、その物珍しさから割と軍内でも名は知れていて、1度式典か何かの時に彼の舞いを見た高地は「凄いなぁ、友達になりたいなぁ」という何故そこに結び付いたのかわからない結論を叩き出した。
早速次の日に、彼を探していつも踊り子たちが練習している場に足を運んでみるも、彼の姿は見当たらない。
あれ？と思って少し歩いてみると、物陰に隠れるように昼食を食べる彼を見つけた。

松村「…！」
目が合って、逃げようとした彼の手を「待って」と優しく掴むと、彼は何か怖いものを見る目でこちらを見ていた。
恐らく、いやほぼ確実に松村の高地への第一印象は悪かっただろう。
聞いた事はないが、彼に聞いてみれば間違いなく「最悪だった」と返ってくるはずだ。

先にも述べたが、松村は「数少ない男性踊り子」であった。
後から聞いた話なのだが、女性の多いその職業に就く彼をあまり好しとしない人も多く、また、元から高い表現力に嫉妬する人も多く、
「あの踊り子はきっと男色家に違いない」「男をも誘惑してくるつもりだ」なんて噂を巻き散らす輩もいれば、反対に
「あれはきっと他の踊り子目当てで踊っているんだ」という噂を巻き散らす輩もいたという。
その状態で何も言わずに腕を掴んでしまったのだから、彼からしたらもう恐怖だったのだろう。
今思えば大分悪い事をしてしまった。