やあ、あずーる【アズール・アーシェングロット】 (ページ4)

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「すみません、一体どなたですか」
大きな岩で頭を殴られたみたいだった。どなたですかって言ったアズールの声がぐわんぐわんと頭の中で響く。未だ現実を受けとめきれていない頭でそりゃあ双子も焦るよなぁと思った。

「Aだよ、本当に覚えてない？」
覚えてないです、と答えられるのが怖くてその言葉を出来る限り引き延ばしてゆっくり言った。
「顔見ても思い出せない？嘘だよねアズール」
「ええ、そんな冗談面白くもないですし、らしくないですよ」
腫れ物に触るかのようにフロイドとジェイドがアズールにそう言う。

「どうしたんですか、二人とも」
心底理解できないという風な顔をしてアズールが二人を見上げた。アズールに見上げられたジェイドが小さく首を振って、アズールがこっちを見た。ああ、どうしてそんな目をするの。握っていた宝物が砕けてぽろぽろと床に落ちた。フロイドが息を呑んで私を見た。大きな体を小さく縮こませて私を痛々しく見つめる。

「ーーありがとう、二人とも。私もう帰るね」
踵を返して去ろうとした私の手首をアズールが掴んだ。ジェイドが嬉しそうな顔をしたけれど、違うのだ。

「あのう、これ大切なものじゃないんですか」
私の砕けた宝物をアズールが拾い上げて私の手のひらの上に乗せて握らせた。
「うん、ありがとう」
私の大切なものはアズールのくれた、アズールとの思い出が詰まったものなのだ。間違っても塵みたいになってしまったものじゃあ、ない。

ジェイドが床を見た。そのあと心配そうに私を見た。フロイドもだった。案外幼馴染を心配する心も持ち合わせていたようでほっとした。