#上弦 ページ18
.
.
「…………A?」
その言葉で、私はやっと我に返った。
未だにボーッとした目で杏香を見ると、彼女は心配そうにこちらを見る。
「大丈夫?寝不足??」
「あ、いや…」
「そう?これからどこに行くかも分かる?」
そんな彼女の問いかけに、私はこくりと頷き返した。
これは杏香との合同任務。
目的地では失踪事件が多発しており、昔十二鬼月の出現報告もあった場所だ。
「私たちがよく柱稽古をしているから、また一緒にAと任務ができるね」
「うん、」
何となくまだ身が入っていない状態で同意すると、彼女は急に顔を赤らめた。
「あのね、A……」
「ん?」
「私、今回の任務が終わったら、むっ無一郎くんに告白しようと思うの!!」
ふーん。
そうなんだぁ、告白かぁ、へーえ。
……………はっはああああああ!?!?
「えっあっこっ……え??」
「今まで応援してくれてありがとう。けど私、いつ死んじゃうか分かんないからさ?」
やっと踏ん切りがついた、と彼女はスッキリしたように心の底から笑った。
一方私の心は、煉獄さんの件もあって曇りがかったように気分が悪い。
引き摺っちゃダメだって、分かってはいる。
いる、けど。
「……やっぱ私、無理だぁ…………」
あの人の言葉が絡みついて離れないの。
前に一歩踏み出そうとしても、
彼がどんな想いで私に遺言を遺し去ったのか。
それを考えるたびに、
彼が夢にまで出てきてしまう。
「ねぇ、十二鬼月って……上弦、なのかな」
「………どうだろうね」
煉獄さんを殺したのは、参の鬼だっけ。
仇、取ってあげたいなぁ。
「絶対、倒そうね」
「まあ上弦は凄く強いから、運もあるだろうけど……負けるわけにはいかないし」
と話しながら走っていると、ようやく目的地へと着いた。
鮮やかな茜色の夕暮れ景色が目に映り、一瞬見惚れてしまう。
「綺麗だね…」
「うん、でも微かに鬼の気配がする」
ずっと立ち止まって見ていたいが、どうやらそうもいかないらしい。
「……………上弦だ」
ああ、無一郎と最後に話しておけばよかった。
261人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「鬼滅の刃」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
Runa - 紅乱さん» 一気読みだなんて!めちゃくちゃ嬉しいです!杏香をそのように言ってもらえありがとうございます!! (2020年1月18日 11時) (レス) id: e03723cf47 (このIDを非表示/違反報告)
Runa - 永久さん» 最後までお読み頂きありがとうございます!!貴方様のコメントで泣きます!!!!! (2020年1月18日 11時) (レス) id: e03723cf47 (このIDを非表示/違反報告)
永久(プロフ) - 完結おめでとうございます!!もう本当に!!泣きます!!!!! (2020年1月17日 17時) (レス) id: 75d8805815 (このIDを非表示/違反報告)
紅乱 - 今日見つけて一気読みしてしまいました!杏香ちゃん良い子すぎて泣ける…… (2020年1月16日 21時) (レス) id: 649e22ca45 (このIDを非表示/違反報告)
Runa - 雫さん» それなあああです!!こんな親友私もめちゃ憧れます! (2020年1月16日 18時) (レス) id: e03723cf47 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:Runa | 作成日時:2019年12月5日 23時