ヘリクリサム【森田美勇人】 (ページ45)

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Aside

安井くんに、あったことを話した

話してる最中、ずっと優しい声で

「うん」って相槌をしてくれて

気づけば全部全部吐き出していた

「……期待してしまった私って、本当バカ」

「バカすぎて……呆れる」

私が話し終えたあと、安井くんは一つため息をついた

安井「…美勇人ってさ、不器用じゃん」

「……うん」

安井「…不器用で、それでもってさ

めちゃくちゃ周りのこと考える奴じゃん」

「…うん」

安井「…アイツなりに、考えたんじゃない？」

キャップが邪魔して安井くんの顔は見えないけど

きっと、真剣な眼差しで話してるんだと思う

安井「わかんないよ？ほんとのところは。

でも、同じ男として。俺が美勇人だったらさ…」

安井「……同じメンバーの…

……Aを好きになったらさ…」

安井くんの声だけが聞こえる空間

安井「…それって、

簡単なことじゃ済まされないんだよ…」

安井「自分の気持ちだけで、動けないんだよ……

自分の想いだけで、思い通りになんて…できない

それがどんなに自分にとって苦しくても」

安井くんの言葉はやけに説得力があって

そうか、そりゃそうだ、当たり前だ

って。私も単純にそう思った。

私がむしろなにも考えていなさすぎなんだ

同じメンバーで付き合うなんて

許されることじゃないんだ

安井「……美勇人の気持ちが、俺は痛いほどわかる」

安井くんの声が少し震えた気がして

ゆっくりキャップを取って、顔を見た

彼の顔はあからさまに歪んでいて

私と目が合うと、一瞬で顔を逸らして

安井「……はは、美勇人のほんとのとこは

やっぱわかんないけどね！」

何にもないかのように小さく笑った