認めていた【中原中也】

八頁目◆ ページ11

訓練と云う名の暴行。

　そう云われても仕方がねェ……。けど、俺はAを育てるためだ。きっと、兄妹だから気付いてくれる。そんな期待を込めているンだ……。

　訓練後、自分の部屋に戻ると、其処には太宰が居た。そいつは俺の布団の上であぐらをかきながらカニ缶を食ってやがる。

「おい、手前如何してここに居る?」

「そんな事よりさ、之、どういう事だい?」
太宰の顔は何時ものちゃらけた顔と違い、真剣な顔つきで話を持ち出した。

「先程、Aちゃんを見かけたんだけど、何、あの傷? 普通だったらあんな傷つかないよね?」
太宰の目は、明らかに俺を疑っていて、ポートマフィアにいた時の瞳をしていた。

「訓練だ。悪ィか? それに、ポートマフィアから逃げ出した奴が何云ってるンだよ」

「私は、逃げ出したんじゃない。それに、訓練してても非道すぎだ」

「何だよ、手前だってそんぐらいしてただろ?」

　俺と太宰の溝が余計深まっていく。判っていた事だが、少し悲しい。

「――Aちゃんが善いって云ったら、Aちゃんを探偵社に連れていく」

「ハァ!?」
驚きで声が漏れる。きっと、俺が何をしたかは凡て判っているんだろう。――だから、それを伝えてきた。

「悪ィがそれは無理だ。Aは今ポートマフィアの戦力。手前の玩具なんかじゃねェ」

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