3. ページ3
.
「いらっしゃいませ」
「……どうも」
次の私のシフトの日も、清川さんはやって来た。こんなにコンビニでばかりご飯を買って大丈夫なんだろうかと思うけれど、彼は全くもって元気そうだ。
いつもは無かったのに、今日はお辞儀に加えて「どうも」まで付けて貰ってしまった。コンビニはどうしても横暴なお客様が多いから、ちょっとのことで嬉しくなってしまう。
「この前はありがとうございました」
「とんでもないです。よくありますので」
ペコペコしている清川さんに私までペコペコしてしまう。1000円お預かりして、280円のお返し。トレイに乗せて渡すと、清川さんは私よりも先に「ありがとうございました」と頭を下げた。
「ありがとうございました、またお越しください」
彼を見送ると、隣のレジの田中さんがばしばしと私の背中を叩いてきた。今日はお昼のシフトなので、主婦の田中さんと同じだ。いつも家で育てた野菜を持って来てくれるので、とても助かっている。
田中さんは「ちょっと！Aちゃん！」と嬉しそうな声を上げる。
「王子と知り合いなの！？」
「……王子？」
「さっきのお客様！」
おば様達の中で、常連のお客様にニックネームをつけるのが流行っているというのは山本に聞いていたけれど、清川さんは王子と呼ばれているのか。私はマスクの下で笑いを噛み殺した。
「この前コピー機に免許証置き忘れて行かれたので、渡しただけです」
「あらそーなの」
「私鬼のシフト量なので、名前覚えて下さってたみたいで」
「いいわねぇ……私も覚えて貰いたいから、シフト増やそうかしら」
嬉しそうな田中さん。たしかにああいう若くて感じの良い男性はおば様方から多大なる人気を受けそうだ。
「免許証見たってことは、マスクの下も見たの？」
「え」
「どうだった？マスク外してもイケメンだった？」
「……はい」
「きゃー！やっぱり！」
普通にかっこよかった記憶がある。マスク詐欺だとは少しも思わなかった。免許証の写真って指名手配みたいに写るとか言うし、それであの写りなら普通にかっこいい。
頷く私にきゃぴきゃぴ嬉しそうにしている田中さん。
「Aちゃん、狙っちゃえば？」
「え？」
「彼氏いないんでしょ？」
「……彼氏に使うお金勿体ないので」
私の言葉に「若いのに勿体ない〜！」という田中さんに愛想笑いを浮かべつつ、別の仕事に移る。主婦の方とのシフトは楽しい半分こういうところは若干面倒臭い。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1074人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「実況者」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
parumu(プロフ) - かえる。さん» はじめまして！ありがとうございます(；＿；)♡これからも宜しくお願いします〜！！ (2022年8月28日 21時) (
レス) @page38 id: 3fe3b17a70 (このIDを非表示/違反報告)
かえる。(プロフ) - 初コメ失礼します!いつも楽しく読ませてもらっています！応援してます！ (2022年8月28日 21時) (レス) id: 06d9623eb5 (このIDを非表示/違反報告)
parumu(プロフ) - いぬU・x・Uさん» はじめまして！そんなふうに言っていただけて嬉しいです(；；)まだ何も起きていない平和なお話なのですが、楽しく読んでいただけると嬉しいです！ぼちぼち頑張ります〜！ (2022年8月28日 21時) (レス) id: 3fe3b17a70 (このIDを非表示/違反報告)
いぬU・x・U(プロフ) - 初コメ失礼します…！とっても素敵なお話をありがとうございます！！これからも主さんのペースで更新応援しております〜！！ (2022年8月27日 13時) (レス) @page37 id: b1951e364b (このIDを非表示/違反報告)
parumu(プロフ) - リーフィア推しの【タクト】さん» そうなのです、読んでいただきありがとうございます🥰 (2022年5月24日 20時) (レス) @page29 id: 3fe3b17a70 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：parumu | 作者ホームページ：https://mobile.twitter.com/parumu_u_62
作成日時：2022年4月23日 16時
