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階段を合計で六回も駆け下りた俺は、息を乱しながらも教室に辿り着いた。まずは手前にある自分の教室から、スパイクを見つけ出して手に取る。
次は横尾さんと藤ヶ谷の教室に向かう。藤ヶ谷が普段生活している教室と考えると少し心臓の鼓動が速くなった。心臓の動悸を抑えて、嫌々ながらも教室に入る。
中にはもちろん誰も居らず、窓からの夕日の光が差し込んでいてそこにはまるで白い蝶のように埃が舞っていた。横尾さんの机の場所をうろ覚えだが、何とか思い出して席の前に立つ。
引き出しに手を突っ込むと教科書は一切入っておらず、一枚の紙だけがあった。すぐにそれが目的のものだと自覚し、手に取る。
そこには、びっしりと文字や図が書かれていて吃驚した。流石横尾さんと彼に感心を持ちながら教室を出て行こうと足を踏み出した瞬間、教室の入り口に誰か居ることに気付く。
それは紛れもなく藤ヶ谷だった。身体の汗が一気に噴き出た感覚に襲われる。足に重りが付いたような重力○○しかかられ、足は心の中で願っても微動だにしなくなってしまった。
「……何してんの、」
「人の机漁って」
すると藤ヶ谷の目つきに鋭さが加わって俺のことを睨む。身体にチクチクと痛みが走って、心も苦しくて辛く感じた。そんな頭の中では「俺今日、死ぬかもしれない」と勝手に自分の余命宣告を告げてる。
意外にも余裕な気持ちに自分でも驚く。今まで辛い経験を積み重ねていて開き直ってしまったのだろうか。けれど藤ヶ谷の問い掛けから時間が経っても身体は石のように固まっているし、声も喉が痛すぎて言葉に表せなかった。
いつまで経っても目をパチクリと瞬きするだけの自分に痺れを切らしたのか、こちらに近付いてきた。その度に心臓は鼓動が激しくなって、息をする暇もない。
彼は一歩踏み出せばぶつかる距離まで近寄ってきた。藤ヶ谷の身体から知らない花の匂いが鼻に届く。厚化粧をしている女性が漂わせてそうな強い香りに眩暈がする。
頭もふわふわしてきてぼっーとしていると、俺の手に握られていた紙を取り上げられてしまった。手に持っていた物を取られた衝撃で我に返る。
「……ちょっ、何すんだよ!返せ!」
俺がすぐさま反応したのにも関わらず、すぐに上にあげられてしまってギリギリ取ることは出来なかった。必死にジャンプしても紙は空高く上げられてしまって届かない。
「これ、渉が頑張って書いてたやつじゃん。」
「何おまえ、これ盗もうとしたの?」
盗みを働いたと疑わられた事を知らされて、頭の後頭部を鈍器で殴られた衝撃が走った。
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作者名:supia | 作成日時:2021年10月19日 21時