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「……は?ふざけんなよ!それは横尾さんに頼まれたの!」
疑いを晴らすため、本当の事を言うが彼はあまり信憑性が無さそうな顔で俺を見ていた。正直、とても腹立たしいことだ。頼まれてここまで来たのに挙げ句の果てに泥棒扱いされて自分を卑下する。
紙は降ろされることなく、時間だけが過ぎていった。時間が経ちすぎて、今自分は何をしてるんだと分からなくなってきてしまった。
「……お前、俺のこと好きなの?」
「……は?」ついそんな事を言ってしまうほど、自分の中ではとても呆れた感情が湧いてきた。俺が怪訝な表情を向けると彼は眉を下げて、怒っているような顔に変わった。
「何でそうなるんだよ、」
内心この恋心がバレてしまったのかと焦りながらもかろうじて聞き返す。彼はそれを聞くなり、口を尖らせて拗ねたようにそっぽを向いた。紙を軽く手の上で遊ばせて俺と視線を合わせようとしなかった。
少しその態度に更に苛立ちながらも声をあげて催促を送る。するとやっと此方にむき直したと思えば、先程より近付いてきて心臓が飛び出そうになった。
「貸した後、教科書に薄く“好き”って書いてあった」
今度は俺が勢い良く視線を逸らした。それは思い当たりがあったからだ。それは確実に自分がしたことだと一瞬で分かった。
教科書を貸してくれた事に舞い上がって、つい勢いに任せてその開いてたページにシャーペンを走らせてしまった事を思い出した。その時は慌てて消したけど、もしかしたら痕が残っていたのかもしれない。
恥ずかしくてたまらなかった。けれどまだそれは確信ではないと感じとる。すると彼は俺のほっぺを片手で掴んで、顔を寄せられた。
「俺のこと好きなの?」
次は視線を離せないぐらいの近い距離で言われた。心臓は暴れ散らして、もう鼓動の音は聞こえなかった。けれど汗は身体から尋常じゃないほど溢れかえっていて、窓の隙間から吹く風がとても冷たい。
「……んな、訳っ」
「本当に?」
好きと言ってほしそうな藤ヶ谷の態度に戸惑いのせいか言葉が喉で突っかかった。この態度に言っても良いのではないかと思ってしまった。
必死にその考えを捨てる。そんな訳がない。それならば、何故あの時あの言葉を投げかけたのか分からなくなってしまう。藤ヶ谷の恋愛対象は、女だ。男が入る隙は無い。
「……じゃあ、キスしてくれたら返すよ」
「……は?」
また呆れた声を出してしまった。誰もがいきなりキスしろと言われたら、全員がそう答えるだろう。それよりも目の前の藤ヶ谷が真剣な表情で見つめてくることに不思議でたまらなかった。
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作者名:supia | 作成日時:2021年10月19日 21時