もう恋心なんて忘れた (ページ18)

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悲しそうな顔をする友達を見て、俺は性格が悪いと自覚しながらも勝ち誇った気持ちに浸っていた。みつは、申し訳そうに目尻を下げているが、守ってくれたのだから彼は一切悪くない。

その意を伝えるため、みつのふわふわでシャンプーの匂いが漂う髪を優しく叩きながら撫でた。すると彼は、それに安心したのか少し表情が緩んでホッとする。

俯いていたはずの友人は、みつの腕を荒く取って自分の方に引き寄せた。乱暴に愛しい人を扱うそいつに酷く腹が立って、睨みつける。けれどそれはさり気なく無視されて、「授業始まるから」と淡々と述べたそいつの横顔は悔しそうにみつの腕を引いて去っていってしまった。

「まぁ、また会いに行けばいっか」と心の中で呟いて、振り返る。するとそこには口を開けて、ポカーンと立ち尽くす女子達がいた。

俺はだるくて息を吐きながらも、無理矢理笑顔を作ってその女子達に向ける。すると女子達は、嬉しそうな表情に変わり歓声をあげた。非常に単純と女子達を蔑みながら教室に入る。

席に着くと今度は、クラスメイトの女子達が俺の席を囲った。色んな所から声を投げ掛けられるが、自分は聖徳太子ではないので一つも聞き取れなかった。

ただの騒音にしか聞こえなくて、また溜まった息を吐いた。そして席を立ち、驚いている女子達に首を傾げながら「ごめんね？」と伝えて教室の隅で騒いでいる二階堂の元に向かった。

「……にか～～、」

「おお、出た！モテ男！」

「助けてよぉ～」

「やだよ！そんな事したら女子達の視線に殺される！」

二階堂もだいぶうるさいけど、女子達よりは気を使わなくて済むから気が軽くなる。いまだにぶーっぶーっと言う二階堂を軽くあしらって、ふと窓の外を見た。

そこには、元気よく遊ぶ生徒たちがいた。その生徒たちはサッカーをして遊んでいる。そのサッカーボールを見て、みつの姿が浮かぶ。

まだ、サッカーを続けているんだ。出来れば、合間を縫って部活に取り組むみつを覗きたいな。きっと楽しそうな笑顔で輝いているのだろう。そう思うとまた口角があがってしまった。

「玉～？もう席着かないとヤバいよ？」

窓を見つめていると二階堂が元の世界に連れ戻してくれた。もうすぐ、授業が始まると自覚して女子達が居なくなった席に腰を下ろす。

けれど机の上には、教科書を一切出すわけもなく肘を突いて再び窓の外を見つめる。そこで、俺はある人物を視界に入れてしまい一瞬目眩がした。背筋も凍って、全身が震えて変な汗をかく。