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気持ちが高ぶってしまい、つい飛び込むように抱きついてしまった。隣にいる友達の目を見たら居ても立っても居られなかったんだ。

迷惑かなと思って、顔を覗いてみるとあの時のように安心しきった表情で胸を撫で下ろす。そんな顔されちゃったら、一生離したくなくなっちゃうよ。

俺は目の前の小さいお兄ちゃんを更に強く力を込めた。その胸にぴったりとハマる彼を抱き締めると昔のことを思い出してしまう。

嫌な思い出なのか、良い思い出なのか分からない。けれど俺にとっては、罪悪感がこみ上げてしまうのであまり思い出したくないものだった。

それに彼奴の事を思い出しちゃうから。

脳裏にそいつの姿が思い浮かぶと無意識に抱き締める力が強くなった。すると彼は流石に苦しくなったのか、胸をトントンと叩いてくる。そんな可愛い抵抗に微笑みが止まらない。

「……玉ちゃん!!」

痺れを切らしちゃったのか、怒られてしまった。俺はみつを困らせたくない気持ちとまだ離れたくない気持ちで、心の中はぐちゃぐちゃになる。渋々心を落ち着かせながら力を緩めた。

けれど決してそばを離れることなく、みつの肩が当たるぐらいに立ってやった。するとみつの友人らしき人は、俺を軽く睨みつけてくる。

そんな視線に気付かないふりをしながら、今説明をしているみつの肩を軽く抱いたらそいつは機嫌を損ねたらしく目つきが鋭くなった。いい気味だ。

彼は昔から鈍感だったから、そんな小競り合いも気付かずに必死に説明をしている。その姿は、とても可愛らしくて昔に抱いていた気持ちが再びこみ上げてきた。

そんな愛おしいみつに出逢ったのは、俺が小学四年生の時だった。その時、みつは小学五年生。僕達は激しい雨の中、運命的な出逢いをしたんだ。

あの時のことを更に鮮明に思い出してしまい、気持ちが高鳴ってつい一生懸命説明をしているみつを抱き締める。

「……わわ!やろろー!」

口では否定してくるけれど、素直じゃないのか手はちゃんと俺の背中に回してくれた。受け止めてくれていると分かると、その意味に期待してしまった。

すると俺の腕に冷たい手が掴んでくる。その腕の正体はとても不機嫌な顔をしているみつの友人だった。キツく睨みつけてくるが、そんなものは今の自分には効かない。

「いたっ、」

とくに痛くもないが、わざとらしく声をあげてみる。するとみつは、掴まれていることに気付き友達に少し怒りが混じった声で注意してくれた。その光景をニヤニヤしながら見つめる。友達はショボンと落ち込んで俯いた。

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作者名:supia | 作成日時:2021年10月19日 21時

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