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子供の頃から、ずっとピアノと共存してるみたいな日々だったけど……今が一番、本気でピアノと向き合う生活を送ってる気がする。
でも、ある日…………レッスンの後メリナに言われた。
「A、ピアノは何かを忘れるために弾くものでは無いのよ。」
「…………………。」
メリナは、史上最年少でこの大学の教授になり、今も現役で活躍するピアニスト。
ピアノには厳しいけれど、普段は穏やかでとても優しい。
母が生きていたら、ちょうど同じ位の年齢の女性だ。
そして、メリナも幼い娘を病気で亡くした過去があった事を話してくれた。
私が既に母を亡くしている事を知ってからは、自宅に食事に招いてくれることが増え、本当に良くして頂いている。
ドイツ人らしく、華やかな生活より自然や芸術を愛し文化や伝統を大切にする……心が豊かになるような毎日を大事にしているような人だ。
新しいもの、刺激的なもので溢れる日本での生活と違い、彼女からは音楽以外にも、心の目で物事の本質を見る大切さを教えてもらった。
そして、、、告げられた言葉。
「日本で聞いたAのピアノとは、今は音色が違う。
あの時のあなたの音色は愛する喜びに溢れ、強い意志を感じたわ。
でも、今は泣いているように聞こえるの。
ピアノは正直よ………。
不安定な感情が、音に現れてる。
でもね、それを否定することはないのよ。」
「え………。」
「そんな揺らぎですら、あなたの紡ぐ音には魅力があるから。」
そういえば以前、、、木崎さんからも似た様な事を言われたことがあるのを思い出した。
「Aがとても純粋な心を持った人間だということは、ピアノを聞けばすぐに分かる。
ピアノは、あなたの全て受け入れてくれるわ。
喜びも悲しみも、Aの全部をピアノにぶつけるの。
自分の心に……ただ素直に、弾けばいいのよ。」
高嗣との日々を……早く笑って思い出せるように強くなりたい、って思ってた。
とにかくがむしゃらにピアノに向かっていたけれど、メリナの言葉に………何だか一筋の光が見えたような気がした。
そんなある日、
学内での音楽会に出演した後、私のところに来客があった。
日本から来たという、初老の男性。
「あなたのピアノを聴きに来ました。やはり、日本からわざわざ来た甲斐があった。」
ニコニコと穏やかに笑っている。
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めろん(プロフ) - にかはるかさん» ありがとうございます(^^♪私にとっても思い入れのある2人なので、完結してちょっと淋しくもあります。まだノープランですが、2人の未来をゆっくり考えてみますね。 (2019年10月24日 10時) (レス) id: 85fa9eafbf (このIDを非表示/違反報告)
にかはるか(プロフ) - 完結おめでとうございます!2人の関係がすごく好きでした。最後は号泣でした。高嗣サイドも続編も短編も待ってますので宜しくお願いします! (2019年10月23日 10時) (レス) id: 1c69577c40 (このIDを非表示/違反報告)
めろん(プロフ) - りっちゃんさん» ありがとうございます!後半は少しハラハラさせてしまってゴメンなさいw。私的にも、ゆっくり柔らかく愛を深めていく2人を描きたかったので、伝わってくれてるとすごく嬉しいです。 (2019年10月7日 12時) (レス) id: 85fa9eafbf (このIDを非表示/違反報告)
りっちゃん(プロフ) - 連載お疲れ様でした!!すごく良いお話でした…。ほっこりするというか、にかちゃんと主人公ちゃんの間には、ゆったりほんわかした雰囲気や空気感が感じられました。読んでいてハラハラする時もありましたが、読み終わるとほんわかした気持ちになることが多かったです。 (2019年10月7日 0時) (レス) id: 3f1fc3d1a7 (このIDを非表示/違反報告)
めろん(プロフ) - ひよさん» ひよさん、あたたかい言葉ありがとうございます。そして「にかちゃんがにかちゃん」って言って頂けてホッとしています♪続編、まだノープランですがwゆっくり考えますね! (2019年10月6日 1時) (レス) id: 657646c020 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:めろん | 作成日時:2019年6月25日 17時