月の光*1 ページ4
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ドイツに来てから、空を見上げることが多くなった。
ドイツのお天気は、本当に気まぐれ。
雨が降っては止み、曇る。太陽の光が射してまた曇る。
そんな繰り返しで、空はどんどん表情を変える。
アパートメントの窓の外は、遮るものがほとんどなくて。
空を眺めながら、その先に続いてる日本に想いを馳せる日々。
日本に一時帰国して、高嗣に再会できて。
気持ちを確かめ合ってからは、やっぱり高嗣の事を想う時間も増えた。
時差もあるし、高嗣はいつも忙しいから、時々の電話やメールくらいしか連絡は取れないけれど。
心の中の雨雲が去って、気持ちが安定した…っていうか。
高嗣の笑顔を思い出せば、ドイツの空とは反対に毎日晴れ渡った青空みたいな気分(笑)
それから最近、私のピアノの指導者であるメリナの機嫌が良い(笑)
もちろんレッスンは相変わらず厳しいけど「Aを一度日本に帰して正解だった」って。
勧められたコンクールの準備もあったから、一時帰国の相談をしたときはてっきり反対されると思ったのに、すんなりOKが出て。
きっと、CDのレコーディングを応援してくれてるんだと思っていた。だから、より頑張らなくちゃって。
……………でも違った。
ドイツに戻って最初のレッスンですぐに言われた。「日本でAのピアノに、また命が吹き込まれた」って。
留学のためにドイツに来て、メリナ先生にすぐ指摘された事がある。それは、、、「今のAのピアノは、泣いてるように聞こえる」って事。「気持ちの不安定さが、音色に出ている」って。
あの頃、忘れたい悲しみをピアノにぶつけるように、がむしゃらに練習してた。
だけど、メリナはそんな私をすべて受け入れて根気よく指導してくれた。
「気持ちの揺らぎも、喜びも不安も、全てピアノが受け入れてくれる。だからもっと自分の気持ちに素直に弾きなさい」って。
メリナのそんな言葉に、私は光を見い出せてここまで頑張って来れた。
ピアノの前では、まっさらな気持ちでいようって。
そして、今回言われた言葉。
「愛に満ちた音がする。」って。
「日本で何があったかはわからないけれど、、、Aを一度日本に帰したことは、正解だった」って。
もちろん日本での事を話した訳ではないけれど、こうなる事がわかっていたかの様。
メリナには私の気持ちはお見通しだったみたい。
やっぱりピアノは正直だ。
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作者名:めろん | 作成日時:2020年8月6日 12時