つづきはまた明日。

６.Ｋｉ ページ6

藤ヶ谷以外の異様な熱視線に耐えながら、どうにかこうにか収録を終える。
楽屋へ向かう途中、軽くマネと打ち合わせする。
最終スケジュール調整を終えて、ぼんやりと歩いていたら、気まずそうにマネが口を開いた。


マ「…藤ヶ谷さん、大丈夫でした？」


「……何がよ？」


おれを一瞥した後、手帳とスマホをいじりながら、小さくドラマ…と呟くマネ。
あれだけ押せ押せだったくせに、何を今更。
不安そうにチラチラとおれを見つめるマネに、


「…藤ヶ谷は、与えられた仕事はちゃんとやるやつだよ。…どんな仕事でも。」


そう言えば、強張っていた表情が少し柔らかくなって苦く笑う。


マ「…なら、いいんですけど。あの…、」


「……今度は何よ？」


ホッとしたように苦く笑ったまま、また気まずそうに揺れる瞳。そわそわと落ち着かない態度に、深く溜息が溢れる。


「…仕事だから、大丈夫だって。…ドラマ好きだし。」


何となく、言いたいことがわかって聞かれる前にそう言ってやれば、パァと明るくなる表情のマネ。
本当、そんなに不安だったんなら何であれだけゴリ押ししたんだか…
一安心したようにペコッと頭だけ下げて、先に引き上げていくマネを見送る。


さて、どうしたものか…


生憎、今日はこの後なんの予定もない。
楽屋の前で立ち止まり、深い溜息が溢れる。
そもそもプライベートを一緒に過ごすことにも驚愕しているのに、ドラマの役作りに付き合うという藤ヶ谷のとんでもないお願いに、あからさまに気が引ける。


心底、重く感じる楽屋の扉に手をかける。


開いた隙間からヌッと出てくる人影に、驚き後退すればおれの荷物を抱えた藤ヶ谷が仁王立ちしていた。


「…藤ヶ谷っ、」


Ｆ「…何してたの。遅い。行くよ。」


「ぅえっ？！…っ、行くってどこに…、」


つか、おれまだ着替えてもないし。
掴んだ衣装を見つめ、藤ヶ谷に小さく視線を送る。
ばっちりその視線に反応した藤ヶ谷が、呆れたように長く息を吐いて、無理矢理おれを楽屋へと押し込む。


去り際に掴んだ鞄をそのまま貰おうとすれば、頑なに離してくれないおれの鞄。
何がなんだか分からず、藤ヶ谷を凝視すればその手を引き剥がされてグッと背中を押された。


Ｆ「……こいつは人質。」


「…はっ？」


Ｆ「いいから早く着替えてこいよ。」


「…いや、逃げねぇし…！」


Ｆ「いいから、ささっとしろ。置いてくぞ。」


いやいやいや…
藤ヶ谷さん、ちょっと可笑しくないですか？

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