つづきはまた明日。

１４.Ｋｉ ページ14

無事にいつものようにラジオ収録も終わった。
予定になかった(おれの中では)ラジオ収録はあったものの、これから今日の本読みを思い出しながら、今詰め作業しようとか考える。


さっさと帰り支度を済ませて、いざ帰ろうって時に、不意に声をかけられてしまう。


Ｆ「終わった？じゃ、早く行こう。」


「…ん…？…えっ？！」


おれの横を通りすがりながら目配せする藤ヶ谷。
その瞳は、どうゆう訳が早く着いて来いと言われてるようで…
おれを一瞥するとスッと背中を向けてスタスタと歩いて行ってしまう。
藤ヶ谷の一挙一動を凝視して、呆然と見送っていたら、遠くの方からクルッとこっちを向いて叫んでいる。


Ｆ「…なにしてんの！早く来いって！」


「っ、…ああっ。」


帰り間際まで藤ヶ谷の不機嫌を買いたくない。
慌てて荷物を引っ掴んで小走りで向かう。
そんなおれの様子をマジマジと確認したかと思うと、またサッと歩き始めた。
まるでモデルのようなスマートさに、いつ見てもカッコいいなんて反則めいたキュンがおれを襲う。


(つか…、まじ何なんだ…)


流されたまま、促されるまま…
今、おれはなぜか藤ヶ谷の車に乗車している。


「……あのさ、藤ヶ谷…、」


Ｆ「…なに？」


「どこ行くの？」


Ｆ「どこって帰るんでしょ？」


「いや、そうなんだけど…っ、」


何だろう…
珍しく藤ヶ谷と話が噛み合わない。
いつもなら何となくでもお互いの思考が読めたりするのに。


Ｆ「…そんなに身構えないでよ。別に取って食ったりしないから。」


多分。


ぼそっと最後に呟いた言葉は、うまく聞き取れなかった。
別に疑ってるわけでもないけど…、ここ最近の藤ヶ谷の行動はよく分からない。


(一緒にドラマするって言ったくらいから…、)



シンと静まり返る車内。
居心地悪い空気に、落ち着かない自分。
もうなるようになれ、だ。


今更こんなところで降ろしてなんて、言えるわけもなく。
ただただ流れる景色をぼうっと眺めていた。

時々、そんなおれに藤ヶ谷が…


気まずそうに視線を寄せていたことなんて、知る由もなく。


煌びやかに光る外観に、目を奪われて呆然と立ち尽くしていたら、呆れたようにまた藤ヶ谷に呼ばれてしまった。


(もしかしなくても…ここは藤ヶ谷の住まい…)


置いて行かれないように小走りで藤ヶ谷の背中を追う。
タイミングよく降りてきたエレベーターに、二人一緒に乗り込んだ。



おれは今…なにをしているのか。

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