つづきはまた明日。

２.Ｋｉ ページ2

マネが持ってきた藤ヶ谷との仕事は、あれよあれよという間に進んでいく。
正式な台本を渡されて、初めてそれに目を通す。


同性愛者役と決まって以来、おれなりに色々勉強したつもり…だけど。


「っ、…うわ、マジ？」


放送時間が深夜なだけある。
二人の片思いから細やかな心情の変化、シーン、接触…おまけに致してるシーンまで存在する。


なんとゆうか、初めて読んだ感想は…


(…濃厚……、)


何となく開いていた台本をそっと閉じて、そのままローテーブルへとスライドさせた。
藤ヶ谷とはこの仕事を貰った日から会っていない。
後、5日もすれば本読み、顔合わせも始まる。


正直、仕事と割り切ってはいるけれど…、


(藤ヶ谷とラブシーンって…、)


「うわぁぁ…//」


ひとり、赤面する自分が気持ち悪い。
そのままズルズルとソファに身体を預けて項垂れた。


ぼんやりと天井を見つめたまま、この先どうなっていくのかとちょっとした不安に駆られてしまう。
そんなおれの気持ちなんて関係なく、藤ヶ谷はそれなりに役を掴んで撮影に挑むのだろう。
藤ヶ谷のそうゆうとこ、仕事の姿勢、普通に好き…ではあるけれど…


「恋愛の好きってなんだ…」


それも想いを寄せる相手が同性って、どんな気持ちなんだろうか。
フィクションだと理解していても、あまりにも未知な世界すぎて、欲を言えば…好奇心もある。


少しだけ、想像する。
実際…リアルにおれが藤ヶ谷をそうゆう意味で好きなんだと。


(なんか…なんか、)


急激に苦しい。
感じたことない、胸の痛み。
慌てて、想像した思考を打ち消した。


知らない痛みに気付いたら、何かが変わってしまう。
そんな気がして、それ以上先に行くことに躊躇う。


無造作に置いた台本を掴んで、パラパラと巡っていく。


「……藤ヶ谷の顔、見れねぇ…、」


無意識に呟いた言葉がシンとする部屋に響いて、おれの耳に返ってくる。
今更なに言ってんだって思うけど、少しだけどきどきするそれは、知らないフリした。


明日は情報解禁の日。
騒ぐメンバーの顔が目に見えている。
これは確実にいじられる案件だ。


よりによって全員一緒に仕事なんだから。


何となく、藤ヶ谷の側に寄るのは控えようと心に決める。


「…あいつ、絶対明日機嫌悪いわ。」


確信とも言えるそれに、開いた台本を顔面に被せて項垂れた。
おれのいないときに解禁してくれればいいのに。


時々…気に食わないと不機嫌になる藤ヶ谷は、苦手だったりするんだ。

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