04「この通り！」 ページ5
昼休憩。
社内の休憩スペースに設置されている自販機で缶コーヒーを買い、今朝コンビニで適当に買ってきた惣菜パンに齧り付こうと封を開けたその時。
「おっ、Aじゃないか」
守沢先輩が休憩スペースに入ってきた。お疲れ様ですと声をかけると「お前もな」と微笑む。
先輩は自販機に小銭を入れて、私と全く同じ缶コーヒーのボタンを押した。がちゃんと音を立てて落ちてきた缶コーヒーを拾い上げると、私の元へやってくる。
「今日は社食じゃないのか」
「はい。コンビニで適当にパン買ってきました」
私の隣の席に腰掛けて、手元の袋をじっと見つめる守沢先輩。
「……あまり偏った食生活をしてると倒れるぞ？」
「別に普段からずっとこんな感じなわけじゃないですよ。……というか、守沢先輩は私の親ですか」
「ははは、すまん！ついAのことは気にかけてしまうんだ！」
大事な後輩だしな！と私の背中を叩いてくる。普通に痛い。
「……先輩、痛いです」
「す、すまん。……ところで、高峯はどうしたんだ？てっきり俺は昼も一緒にいると思ってたんだが……」
「ああ、高峯くんは――」
◇
仕事が一区切りついて、昼休憩になった頃。ついでにお昼も一緒に食べようか、奢るよ、いやそんなの悪いです、と問答していた時。
「A先輩！お昼、高峯くん借りてもいい！？」
「えっ、え……？」
ひなたくん率いる後輩たち――南雲くん、仙石くん、ゆうたくんがこちらへ駆け寄ってきた。高峯くんは突然手を引かれて戸惑っている。
「お願いッス！先輩！」
「お願いでござる〜！」
「この通り！」
手を合わせて頼み込まれてしまったら、もう何も言えなくて。彼らの気迫に押されるように頷けば、ありがとう！とにっこり、微笑まれる。
そのまま彼らは去っていった。……高峯くんを連れて。
「――ってことがあって」
事の顛末を話すと守沢先輩は「そうだったのか！なるほどな！」と笑った。なんだか嬉しそうだ。
「なんでそんな嬉しそうなんですか？」
「仲良きことは美しきかな、と言うだろう？今日入ってきたばかりの高峯がもう打ち解けているんだ、喜ばしいことじゃないか」
そう言った守沢先輩は、本当に周りをよく見ている。
先輩のこういうところは尊敬すべきところ、だとは思うが如何せん、スキンシップが激しいのが玉に瑕だと私はつくづく思うのだった。
続く (更新停止中)
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