03「……謹んで遠慮しときます」 ページ4
「翠さんは、Aさんと知り合いなんだったよなあ」
「あ、はい……まあ知り合いっていうより、俺が先輩に面倒を見てもらってたってだけですけど……」
高峯くんが答えると、三毛縞さんは「そうかそうかあ！」と笑って。
「ならやっぱり、翠さんの教育係にはAさんについてもらった方が良さそうだなあ！」
「え、」
……なるほど。提案とはそういうことか。
「最初は千秋さんに任せようかと思ったんだが、今回は一度面識があるAさんの方が適任だろう。翠さんもそっちの方がやりやすいと思うしなあ」
な、そうだろ？と三毛縞さんは高峯くんの方を見る。高峯くんは急に話を振られて少し驚いていたが、「……はい」と頷いた。
「Aさんもそれでいいか？」
「はい。高峯くんがいいのなら私は全然大丈夫です」
「俺でもいいんだぞ、高峯！」
「……謹んで遠慮しときます」
「なんでだ！？」
今日入ってきたばかりの新人に拒否されて落ち込む守沢先輩を余所目に、隣に立つ背の高い彼を見上げながら「よろしく」と言えば、「あっ、……こちらこそ」と控えめに頭を下げた。
「よし、そうと決まれば早速仕事をしてもらうかあ！みんなも早くデスクに戻るんだぞお！」
三毛縞さんが威勢よく手を叩くと、みんなぞろぞろと仕事に戻る。
私たちもデスクへ戻った。高峯くんの机は偶然にも私のすぐ隣で。……いや、もしかしたら元々三毛縞さんが私に教育係をさせるつもりで、わざとこの配置にしたのかもしれない。
「あの、速水先輩」
頭の回転が早いというか、何というか……油断も隙もならない。馬鹿そうに見えるけどすごくしっかりしてるし、怒らせると怖いし……下手したらこの会社から消されるかもしれないな。
「速水先輩……？」
「……あ、」
と、散々三毛縞さんに対して失礼なことを考えていたところで、高峯くんがずっと私を呼んでいたことに気が付いた。
「ご、ごめん。何？」
「いや、俺は最初何をすればいいのかなって……」
「あ、そうだね。えっと……まず最初の仕事なんだけど――」
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