声優オタクの声優さん ぱーと3

寂しい ページ21

.






朧気な意識の中手探りでお目当てのものを探す。

そしてあったと思ってた抱き締めれば柔らかさに驚いて目が覚めた。


ハッとして抱き締めたものを見ると愛用している掛け布団だった。




……そうだ。昨日はAちゃんは家に帰ったんだっけ。





Aちゃんは、ライブの前日は気を使って自宅に帰る。
もちろんご飯とか作り置きはしてくれるんだけど、必要以上に連絡しなくなる。




付き合い始めてからはほぼ毎日家に泊まってたし一緒に寝てた。

毎朝の俺の日課といえば熟睡するAちゃんを抱き締めて眺めることになっていたから、布団を抱き締めたのも無意識だったんだと思う。





……………あれ？俺のベッドってこんなに広かったっけ？


それに……、1人の朝ってこんなに寂しいものだったか？





どうやらこの1ヶ月くらいの間でAちゃんがいることが当たり前になってしまったらしい。


女々しいかよ、俺。





そういえば丸2日会ってねぇな。
姿も見かけてない。

昨日も会場には来てたみたいだけど挨拶には来なかったし。

ライブハウスじゃないからライブ中に見つけるのも無理な話だ。



LINEはしてるけど電話はしてない。

よく考えれば声も聞いてないことになる。






気付いたら自慢のガラケーを握っていて、無意識のうちにAちゃんに電話をかけていた。








『もしもし？』


「あ、出た」


『いやいや。出るからね？電話鳴ってるんだし？』


「そうじゃなくて。いつも寝てんじゃんこの時間。
だからまだ寝てんのかなーって」


『ライブだからもう起きて支度してる！』


「やっぱ早くね？笑」


『早くない！



それにしても珍しいねー。朝から電話してくるなんて。ご飯無くなった？』







無くなったくらいで電話するかっての。


正直に寂しかったって言えばいいはずなのに、情けないというか恥ずかしいというか………。とにかく中々言い出せなかった。







『もしかして………寂しかったとか？笑』


「…………」


『え』


「そーだよ。寂しかったの！

声聞きたくて電話したんだよ！」


『かわいいかよぉぉ……』


「かわいいって言うな！」


『ごめんごめん 笑


……夜は友達と飲みに行く予定だったけど今日は家に行くね』


「………ごめんね」


『気にしないでー。

寂しがり屋のうさぎさん 笑』


「Aちゃんマジで許さないからね？笑」






話してれば調子が戻ってきた。

今日も何とか頑張れそうだな。




.

唯一の癒し→←交流

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す