黄瀬涼太は好きな子にアタックできません8

385話 ページ43

「よろしくお願いします！」


夏が近づいてきて湿気がたちこもる体育館

ものすごい熱気の中試合はスタートした


開始と同時に黄瀬くんの元へボールが渡る

ご挨拶といったところだろうか。黄瀬くんはその場からスリーポイントを決めた。

「…っ、」


わたしも思わず息を呑んだ

流れるようなフォームの切り替え。

わたしだったらスリーを打つなんて判断はできないだろう

滑らかすぎて止めようなんて思っても間に合うはずがない


「…はっ、…赤司っち、俺だって昔のままじゃないッスからね！」


黄瀬くんをマークしていた赤司くんは不敵な笑みを浮かべて、「安心したよ」と口に出した


ホイッスルと同時に赤司くんの手元に回るボール


赤司くんはアンクルブレイクで黄瀬くんをかわした


「…っく、、」



しりもちをつかせたあと、その場で高貴な蔑む目をして


同じくスリーポイントシュート。




…綺麗



「成長したのは皆同じだ」



黄瀬くんが奥歯を噛むのがわかった




赤司くんのパスはいつでも的確で、コートが全て見えているような錯覚を起こす

決して体が大きくはないにもかかわらず、その存在感とオーラは黄瀬くんなんて比ではない


…なんの自信がそう見せているのかわからないけど


赤司くんは、やっぱりすごい



第1Qは両者接戦で終わった



のそのそとベンチに帰ってくる黄瀬くん


「はぁ、はぁ、はぁ…」


息切れの仕方が、第1Qじゃない

私たちは決してトレーニングを怠ったりしていないし、黄瀬くんなんてかなり肺活量を鍛えている方…にもかかわらず

…なにこの消耗量




目の前で水をごくごくと飲む黄瀬くんは、汗を拭って口を開いた


「…きついっ、すわ、正直」


ですよね


わたしは黄瀬くんの前に屈んで、「体力配分も必要だからね」と顔を見上げながら釘を打った




ピーーーーーー




第2Qでは何の疲れも見せない赤司くんが、私たちをじわじわと攻めて、点差が14点開いてしまった


黄瀬くんにはさっきの言葉が響いたのかわからないけど
今までなら確実にここで自制さずにやりきって、後半は体力がなくて無理をするのに

ちゃんとセーブして、周りを見れている


キャプテンの貫禄がついてきてる


しっかり隙をついて点を決めて

的確な判断をして

9点差まで縮めたところで第2Qがおわった

386話→←384話

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す