677話 ページ36
Aside
同点になったのはほんの一瞬で
いきなり今までになかったほどのオーラを出し始めた赤司くんを止められることもなく
あっという間に先制点を取られてしまった
ゾーンの間はほとんどアンクルブレイクを発動させなかったはずの黄瀬くんは、さっきのアンクルブレイクから様子がおかしくなり
その後も着々と成長する赤司くんにおいつくのがやっとのように見えた
「ゾーンが切れたのか、」
ふと横から聞こえた監督の声はとても冷たく
わたしは小さく息を呑む
認めたくなかった、ゾーンが切れる可能性があること
しかしそのタイムリミットはいつもよりもかなり早く
なすすべのなかったわたしはまたバレないように小さく深呼吸をした
「…、」
黄瀬くんはその瞬間にパスを受け取り、さっきより落ちたスピードで自分のコートへと走っていく
そして端から走ってきた赤司くんも寄せ付けないオーラで勢いよくゴールへボールを叩き込んだ
「…ゾーンの最中は足の痛みなんて忘れていたようだがな」
ドスっと重くるしい音と共に大男が着地して
まるで隠す様子もないように黄瀬くんは歯を食いしばりながらじっと痛みに耐えている
「…黄瀬くん、」
明らかに足に負担がかかりすぎていて
このままやっては壊れてしまう
そうわかっているのに、あと少しで手にできそうな優勝を逃したくない自分が頭の中で激しく葛藤を繰り返している
「…交代させ…「ダメです!!!!」
監督の言葉を聞きたくない、という一心で大きな声でわたしが遮ると
その勢いで目に溜まっていた大きな粒が音を立てて床に落ちて
私はそのまま頬に流れた筋をガシガシとぬぐった
わたしの視界の端で監督が私の方を見ていたことをわかりながらも
わたしはずっとコートを見つめている
何がなんでも、この試合だけは
もし彼を下げたらわたしはきっと一生彼から恨まれる
わたしの瞳からその意思を汲み取ったのか
監督は小さくため息をついてもう一度手を組み直した
「…黄瀬、、頼んだぞ、」
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作者名:りん | 作成日時:2021年3月19日 10時