664話 ページ23
尾川を馬鹿にしていた一年はやはり予想通りドリブルを専門とした特化型選手で
彼のトリッキーなドリブルが、以前戦ったアメリカのあいつらを彷彿とさせる
俺がマークについても、追いつけないほどに早いその手の動きはだんだん俺の思考を蝕んでいった
「…っくそ!!」
ゴールの板にボールがバウンドした音と共に笛が鳴り
そんな音がさらに俺の心を掻き漁る
点差はギリギリ1桁を保っているような状況が続き、海常にも疲れが目立っていった
パーフェクトコピーができれば、俺は紫原っちの技でこいつをもう少し楽に止められるはずなのに
そんな感情が頭の中をぐるぐるして、一番考えてはいけないことを考えている自分にさらに腹が立っていく
ゾーンに入りたい、入らなきゃ
と言う感情は、むしろどんどんゾーンから遠のいていくことはわかっている
普段も入ろうと思って入っているわけではないのだが
入れないと俺はこんなにも力がないのかと幻滅してしまいそうだ
「…黄瀬!」
一瞬の魔が刺して、俺が心に気を抜いたその瞬間を見逃さなかった赤司っちは
俺の手に触れそうだったボールを勢いよく弾き飛ばした
「…っっ!!」
やべ、
そう思った時にはもう遅くて、俺が立っていたその場所から
過去の彼は絶対にすることのできなかったこの距離から
静かにゴールを決めた
何が起きたのかわからなかった
ゴールを潜ったはずのボールが地面を規則的に叩いていて
俺はだんだんと呼吸が止まっていることに気がついた
得点が入ったことを知らせる笛が鳴り、歓声があがる
「「ワァァァァァァァ!!!」」
赤司っち…ハイスペックすぎるッスよ、
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作者名:りん | 作成日時:2021年3月19日 10時