643話 ページ2
緑間っちに背を向けて自分のベンチに帰ろうと足を動かすと、後ろから緑間っちを呼ぶ大声が聞こえて
その声の主が高尾だと気づいた俺は振り向かずに真っ直ぐに歩き続けた
「…っ、3年間、ありがとう、っ…、っ」
高尾は何故か全てのリミッターが外れたように泣き崩れていて、それを見ている後輩もマネージャーもみんな静かに涙を流していた
「…おれ、真ちゃんに何もしてないのに、、…たくさんいろいろなものもらった、」
喋り続ける高尾の声を聞きながら、ベンチに座るAに小さく手を振って
俺は自分の飲み終わったボトルを静かに差し出した
「…真ちゃん、ありがとう、」
俺のことを見上げる彼女は母親のような目をしていて
俺が思わず何かあったかと聞き返そうと顔を動かすと
温かい雫が頬を伝った
体育館にぽつりと落ちた雫を確認するように床を眺めると、またその落ちた雫の横に小さな水溜りができて
俺は咄嗟に指で目を拭う
「…黄瀬くんは、緑間くんに挨拶はもういいの?」
その彼女の優しい声は、全て俺を理解した上で俺に的確に言葉を紡いで
その言葉に刺激されて緩みだした涙腺は、静かに俺の指を濡らしていった
「…ん、大丈夫ッス」
勝ったはずなのに、こんなオーラの俺のせいで海常高校はあまり勝利ムードではなく
観客席では少しどよめきが生まれていた
明日で、全て終わる
明日が俺たちの最終決戦だ
その事実が俺を更に苦しめていった
今日この後行われる試合で俺たちの対戦相手が決まる
しっかりとこの目で見届けて明日を迎える心の準備をしなければ、と思いながら俺は拳を握った
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作者名:りん | 作成日時:2021年3月19日 10時