検索窓
今日:15 hit、昨日:3 hit、合計:37,262 hit

622話 ページ31

感情にそぐわない愉快な音楽はずっと私たちを包んでいる

つい近くでじゃりじゃりと砂を砕く音が聞こえて
その音を立てた主は私の前に立ち止まると口を開いた

「A」


あまりに溶けてしまいそうな優しすぎる声にわたしは動揺してしまい、「あのね、!」と声を荒げながら彼の胸板を押す

「ごめん、ちがうの、みんなと楽しそうなところをただ眺めてたらリナがああやって勝手に言っただけで、その、」


みんなと引き離すつもりはなくて、と続ける私のことを見ながら彼の口角はニマニマと上がっていく

すると、彼はそのまま私の手を取って

「Aが俺のこと好きなのはわかったッスから」と自慢げに私を見た

その言葉に思いっきり顔をあげると
おそらく真っ赤だった私の顔を見て、彼はさらに満足そうな顔をする

彼の満足そうな顔を見て私も思わず笑顔が溢れ
2人の微笑んだ声が、淡く夜空に消えていった


曲が終わって、一通り盛り上がり自然と拍手が上がる校庭では
さらにその後絶え間なく曲が流れ始め

疲れ果てた私は手を解いて動きを止めた

「ちょ、きゅーけー、」

もう終わり、?と呆れた声を漏らす黄瀬くんに
この人さっき帰ったんじゃないの?と、私は思わず頭に疑問符を浮かべて

そんな彼も珍しく息が上がっていた

疲れてないわけ、ないよな

飛行機の長旅の後は爆睡してしまうものなのに無理矢理学校に来て
こんな踊って

ほんと、無茶するんだもんな


「…んでも、俺も結構、限界ッスわ」


いつもなら絶対に弱音を吐かない黄瀬くんがそんなことを口にするなんてよっぽどだな、と私も少し驚いて

すっかり打ち解けた私たちは2人で飲み物をもらいにいった


キャンプファイヤーでは昼間の文化祭とは違って同じ学校の生徒しかいないし
私たちも何も隠すことなく隣にいることができた

少し遅れてやってきた私たちの青春はたったほんの少しだったけど、それでも…


やっぱり、彼の隣でキャンプファイヤーを見ることができてよかった


右手に紙コップを持ちながら彼の隣に腰掛けて
砂利の上にお尻をつけて砂まみれになって
そんなところまでひっくるめて青春ってことでいいよね

ふと横にいる彼がずっといなかったことを忘れてしまうほどに当たり前に戻ったこの距離感が愛おしくなって

バレないように少しだけ、体を彼に引き寄せた

それと同時に途端に空が明るくなり

「…ワァ!」

ドォンと重苦しい音が鳴り響き、海常高校を照らした

623話→←621話



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (24 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
78人がお気に入り
設定タグ:黒子のバスケ , 黄瀬涼太 , 黄瀬   
作品ジャンル:アニメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:りん | 作成日時:2021年2月25日 10時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。