613話 ページ22
「おつかれさまでしたーーーーーー!!」
高校最後の文化祭はあっけなく幕を閉じ、私たちの演目は大成功に終わった
幕の閉じた体育館の裏ではもうすでに他のクラスが大道具を片付ける作業が始まっていて
今終わったばかりの私たちは、クラスみんなで写真を撮ったり
各々自由に過ごしていた
「んでもさぁー?」
クラスのサッカー部の男子が機嫌良さそうに大声を上げて、「黄瀬いねえとつまんねえよなー!」と続ける
その声にみんなが「ほんとな、なんか結構いないと盛り上がんねーよな」と声を揃えて
「黄瀬っていつ帰ってくんの?白河」
と、私の方を見た
さっきまで馬鹿みたいに盛り上がってたんだからそのまま騒がしい声でかき消してくれればいいのに
こういう時だけ急にクラス全体が静まり返って
わたしが少し答えずにいると、リナが場を整えようと「あっ、えーっと、!」と口を開いた
そんなリナに手を伸ばして止めたわたしは、サッカー部の男子の方を向いて優しい声でつぶやいた
「あーごめん、わかんないんだよね、行く前に喧嘩しちゃって…それっきりなの」
わたしの言葉にびっくりしたのか、クラスの女子が「えぇーっ!!喧嘩とかすんの!」「意外」と各々好き勝手に声を上げ
またその言葉に心が蝕まれていくのを感じた
前にもきかれたことがあったし
わかんないならわかんないってはっきり言ったほうが楽かな、と判断した上での言葉だったつもりなのに
結果的にめんどくさいものを招いてしまった気がする
「えじゃあ連絡も取ってないん?」
「まあね、あはは、、」
「えーっあの黄瀬が!?」
相変わらずうるさいサッカー部は少し明るい感じで受け止めてくれて
少し安心した自分もいた
「早く仲直りできるといいな!」
語尾を言い終えたと同時にわたしの背中をバシンと叩いたサッカー部の男子は
わたしに背中を向けて「さ、写真撮り終わったやつは片付け手伝おうぜーー!」と叫びながら歩いて行った
す、救われた…のかな
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作者名:りん | 作成日時:2021年2月25日 10時