552話 ページ10
Aside
結局黄瀬くんの第一志望はきけないまま、時間はゆるゆると過ぎていった
いつも通りの部活で、いつも通り笛を咥えてみんなの様子を見る
ボールの跳ねる音を聞きながら、第一志望が被ったことをリナに言えずにモヤモヤしてたことを思い出して
言えたことが嬉しくてニヤニヤしたと同時に私の視界に映った黄瀬くんが
「ぅぉらぁッ!!」
ダンクを決めた
黄瀬くんはそのままスタイリッシュに地面に着地すると、何か真剣な顔をしながら左手を腰に当て、右手でTシャツの襟で口元を拭う
「黄瀬くん、すごい集中してますね」
どことなく、黄瀬くんに話しかけづらい状況と思った私は
私の横に座っていた監督にそう呟いて
それと同時に監督が「まあな」と返事をした
「お前聞いてないのか?」
まるまるとしたフォルムで腕を組んでいつも通り神妙な顔の監督が私を見上げながらそう聞いてきて
私はなんのことかわからずにぽかんとした目で監督を見つめた
「…」
監督は私も一緒に顧問から聞いたと思ったようで
少しまっすぐな目で悩んだ後に、小さく息を吸って口を開いた
「黄瀬にな、大学からスカウトが来たんだ」
私はその言葉を聞いて一瞬目を見開いて
思わず「本当ですか!?」と声を上げた
昼間にスカウトが来なかったと嘆いていた黄瀬くん
そりゃ来ないわけないと思っていたけれど
…良かったね黄瀬くん
監督は静かに頷き、私が予想していたよりも遥かに高ランクの大学の名前を口にした
「え、」
思わず私も声を漏らす
偏差値はかなり高いし、その大学を出ていたらかなり優秀とされる大学
…そんなところからスカウト…!?
「黄瀬はバスケがあまりに優秀だから、頭の良さなんて関係なしに引き抜きたいんだと思うんだがな」
「…でもそれって、入ってからの授業とかは頭いい人について行かないといけないってことですよね」
私が慌てた声でそう質問すると、先生は眉間にシワを寄せて小さく返事をした
…だから、あんな真剣な顔をしてるんだね黄瀬くん
その大学は東京に位置し、もし彼が東京の大学に入るなら私だって嬉しい
更に彼の今の仕事の事務所も東京だから…いいことしかないんじゃないかな
黄瀬くんはなぜ、嬉しそうじゃないんだろう…
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作者名:りん | 作成日時:2021年1月28日 16時