551話 ページ9
黄瀬side
「黄瀬は?」
さっきの尾川の声が頭の中をループして
言いかけたところで先生の呼び出されたことがラッキーだったのかアンラッキーだったのか…
そんな余計なことに頭を巡らせながら教室の横の小さな準備室のようなこの教室の内装を眺めた
少しじっと眺めていたら、顧問の先生がもう一度「黄瀬」とぶっきらぼうにつぶやいて
俺も背中を震わせて咄嗟に上ずる声で返事をした
先生はいつも持っている授業用のファイルの表紙に貼り付けられた付箋を見て、要件を確認すると同時にゆっくりと顔を上げ
俺にいつもと変わらない声で言い放った
「黄瀬、お前に大学からスカウトが来た」
先生の顔は真剣で、思わず急な先生の言葉に俺も「…え、」情けない声を漏らす
そして少し口角を上げた先生は、大学の名前を口にした
…その大学は、笠松先輩が一昨年第一希望で受験をして合格することができなかった…東京の大学だった
「…っ、そんな、何で俺なんか」
そこまで言いかけたところで顧問が言葉を遮るように「お前だからだ」と温かい声で言い放ち
俺は静かに口を閉じた
「…ただ――――」
「少し、頭のいい学校だから…入ってから苦労するかもしれんな」
その大学はとてもバスケが強く、日本代表の養成チームと連携していると俺も笠松先輩から聞いた
もちろん入りたい…けど、
『俺だって…、……』
頭の中で余計なことを思って、それを振り払うように目を瞑る
「…そう、ですか。考えてみます」
俺は静かに返事をしてその言葉を残し、先生に挨拶をしてその場を去った
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作者名:りん | 作成日時:2021年1月28日 16時