黄瀬涼太は好きな子にアタックできません12 (ページ43)

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585話ページ43

…応援、

「できる、…できるよ。」

私は自分を納得させるように口に出して呟いた

「…私だって小さい頃海外に住んでたし、あんまり遠くないこともわかってるから、」

この言葉に嘘はない

考えてみれば、そんなに黄瀬くんと一緒にいたいなら私が追いかければいいだけの話なのである

大学に行って４年過ごして、それでそのあと黄瀬くんを追いかけて海外にいく選択肢だってある

力強くそう言葉にした私をみた尾川くんは、小さくため息をついて顔を上げた

「…それ、黄瀬に言ってあげたことあるか？」

尾川くんの言葉は私の予想の斜め上の質問だった

「ない、」

今までだって、2人で話し合ったことは一度もない

2人のことなのに、2人の将来の話なのに
ちゃんと2人で向き合ったことがなかったんだ

「女って意外と強いからなぁ、…お前が割としっかりそうやって思ってても、…」

「おそらく、黄瀬が一番責任感じて悩んでるんじゃねぇのかな」

そう呟きながら少し笑みを浮かべて空を見た尾川くんは
黄瀬くんの元へ繋がったこの大きな空に言葉を投げかけたように見えた

黄瀬くんと進路について直接話したこともないし、他の人からの話だけで流されて彼を信用できてなかったと言われても反論できない

ふとその瞬間に夏に散々抱かれたあの日を思い出して

脳内に残った黄瀬くんの声が再生された

「…俺がどんなに離れても、…絶対帰ってくる」

黄瀬くんは、きっと

私とのことをとても悩んでくれている

私が理由で、留学の一歩を踏み出せてないような気がする

「2人っていっつもそうだよねー、全部報告し合わない」

ずっと黙って聞いていたリナが、待ってましたと言わんばかりに声を上げながら段ボールにカッターを進める

「だめだよー、ほんと、ちゃんと話し合わなきゃ」と笑うリナに私は何も反論できず黙ってしまい
そんな私に、彼女は「ま、でもAが文化祭のことずっと気にしてたのに早く言わなかった黄瀬くんも悪い」と微笑んだ

「結局、昨日謝れると思ってたのに、黄瀬くんフライトが早くなって一昨日帰っちゃって」

「だから、何も話せてないの、」と小さくため息をついた私を見て

リナは「…いいんじゃない？たまには、距離置いてお互い考え直すのもサ」と優しい顔をする

そんなリナの発言に、尾川くんも「黄瀬もそれどころじゃないだろ、今は」と微笑んでくれた

「だから、帰ってきたらちゃんと2人で決めろよ」

その言葉に、私は小さく頷いた