583話 ページ41
Aside
黄瀬くんがいなくなって、その日の夜は何故かうまく寝付くことができなかった
よく、寝付くのに時間がかかる人のことを『寝るのが下手』というけれど
そんなのどういう意味なんだと馬鹿にしていた
でもなんだかその日はその言葉の意味が少しわかった気がした
彼がいなくなった日の1日目はすごく長くて
ずっと黄瀬くんのことを考えていたわけじゃないのに、何故かとてつもなく時の流れが遅く感じた
クラスは着々と文化祭ムードに染まって行き、私たちのクラスもまた準備に取り掛かっている
元気がなくなった私は、あまりみんなに寂しさを悟られないように振る舞っていたけれど
そんな姿もみんなからは空回りして見えるようで、私に対してみんなが優しくなった…ような気がする
余計なことを考えながらカッターを進めていたら、指先にピリッと痛みを感じて私は指を腕ごと勢いよく跳ね上げた
「いって!」
すぐさま刃を閉まって指を力強く押さえつけると
後ろからリナが「ちょっと、大丈夫〜?」と声を上げた
強く押さえつけた指と指の隙間から血がじわりと滲み、スパッといったなと自覚した途端にどくどくと痛み始める指に思わず顔を顰めた
今日は休養日の放課後で、私たちバスケ部だけが残って準備をしている状況で
教室で尾川くんと3人でダンボールを囲みながら作業を進めている
「危ないからA違うことしてて」と母親のような顔をしたリナにカッターを没収されて、私は「えーっ!」とこえをあげた
「お前黄瀬がいなくなって動揺しすぎだぞ〜」
ハハ、と笑いながら横でダンボールをサクサク切り進める尾川くんに、私は「動揺してないし〜」と隠すように頬を膨らませる
「そうか?」とニヤニヤしながら私の顔を見ていた尾川くんが一通り笑って、私に背中を向けて作業を始めた瞬間
私は顔の筋肉を緩めて笑うのをやめた
そんな表情をリナが見ていて、リナは心配そうに私を見つめていた
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作者名:りん | 作成日時:2021年1月28日 16時