579話 ページ37
黄瀬くんがいなくなって、毎日は案外あっさりと進んでいった
時差の関係もあり、黄瀬くんがついたら返そうと思っていたLIMEも
なんとなくぬるりと返すこともなく時間は経過して
何時に着くのかも、無事に着いたのかすらも連絡をくれなかった黄瀬くんに、わたしは少し悲しい気持ちになった
文化祭まではあと少ししかなくて
部活も教室も凄く浮かれているのに黄瀬くんはいない
「黄瀬くん、2週間もお仕事??」
いつも4人で食べる弁当も、リナと2人で向かい合って食べる
なんだか高校一年の時みたいだ
「んーん、バスケチームの見学?下見?らしいよ」
卵焼きをパクりと口に入れて、その温かい甘さを噛み締めながらわたしはリナに返事をした
リナは「ふーん」と呟きながらお茶を口に含んで
そんな彼女に私は「火神くんのとこ、行った」と呟いた
リナは少し理解したような顔をして、「突然だね」と軽く笑って
そんな顔に私も「ほんとね、」と笑って返した
黄瀬くんのいない日常は、私だけを置いて変わらず進んでいく
まるで初めからいなかったように
「まぁーなんというかさ」
いつも以上に元気のない私を見たリナが突然口を開いて
「色々、苦しいよね、追いかける側ってさ」
と笑った
その笑顔はとても苦しそうで、だけど全てを飲み込むような笑顔
きっとリナも高尾くんと色々将来について話し合って
複雑な気持ちを体験したはずだ
なんだかとても苦しくなった私は、詰まった言葉で「うん、」と返事をした
「…黄瀬くんも、色々悩んでるんじゃないかな」
Aに言えないだけでサ、と呟きながらリナは弁当箱を閉じて
弁当箱に閉じ込めるようにそこでその話題は幕を閉じた
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作者名:りん | 作成日時:2021年1月28日 16時