559話 ページ17
「スカウト!?」
青峰っちの言葉に嬉しそうに声を上げた火神っちは、「すっげえじゃんお前!」と身を乗り出して自分のことのように喜んでくれて
そんな火神っちの笑顔に笑顔で答えられなかった俺は、「はは、ありがとっス」とぎこちない即席笑顔で感謝の言葉を吐いた
スカウトというのは、こうやって他の人から褒めてもらえるくらいすごいことなんだ
それはわかっているし、嬉しいかと聞かれたら嬉しいに決まってる
でも、俺はなぜか心にわだかまりを抱えていて
この心のわだかまりがどのようにすれば取り除けるのか答えも出ていない
「んだよ黄瀬、あんま嬉しくねーのか?」
考えすぎて深刻な顔つきになっていたのか、我に帰ると青峰っちが相変わらずの気だるそうな声で俺に質問をしていて
俺はその質問に素直に「嬉しいッス」と答えることができなかった
少し黙り込んでしまった俺を見て、青峰っちはあたまをぽりぽりとかいて
「俺はスカウト蹴った」と口にした
その言葉に驚きを隠せず「えぇっ、!?」と声を出した俺に、青峰っちは「だって、別に俺高校と同じようなバスケ求めてねぇもん」と呟きながら立ち上がる
「…」
完全に固まった俺の視線の先で、ボールを手に取って
少し傾き始めた日に照らされた彼は
「だから、アメリカでバスケすることを選んだ」
と、彼らしくないハッキリとした口調で言い放った
その姿はとても眩しくて
中学の時に憧れた、青峰大輝そのものだった
なんでこの人は、こんなにもかっこいいんだろう
「っつってもな、火神んとこ行くまでずっと迷ってたんだ」
青峰っちは、足元に転がっていたボールを手に取り
指の上で回しながら「でも、行ったら世界が変わった」と少し誇らしげにつぶやいた
「火神と同じところでバスケするかはわかんねぇけど、俺もNBA目指そうって思ってる」
名前の通りに大きく輝いたその姿に
俺の心のわだかまりをぶつけられたような気がした
そうか、
俺も、海外でバスケがしたい
憧れた背中を追いかけるつもりはないけれど
その姿に憧れたのは事実だ
追いつきたい
俺も、
心の中のわだかまりが光り始めた瞬間だった
「なぁ黄瀬、お前も迷ってるんじゃないのか?」
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作者名:りん | 作成日時:2021年1月28日 16時