493話 ページ2
溶けてしまいそうな静寂が俺らを包んで
2人で水を飲みながら、3分ほど黙っていた
もちろん、なにを考えているんだろう、なにを言おう、なんて余計なことは頭の中になくて
ただ、少し心地の良いこの時間を共有していたいと思った
目の前に映る足は青色のジャージを着ていて
横にいる高尾はオレンジのジャージ
こんな近くに座っていると敵なことを忘れてしまいそうで
もし少しだけ運命が違ったら同じ学校で戦えていたのかもしれないなんて思って
「夢、みてるみてぇだった」
そんな俺の心の声を先に遮ったのは高尾だった
口を割った高尾の方を見ると、寂しそうな顔で
いつものヘラヘラした高尾とは似つかない真剣な眼差し
「俺さ、中学の時お前らと戦ってボコボコにされてさ」
「特に緑間のことめっちゃ嫌って、高校で絶対あいつを倒すって意気込んで秀徳入ったんだよな」
初めて聞いた高尾の昔の話に少し驚いたと同時に、高尾の口から出た「緑間」という言葉に少し違和感を覚えた
「そしたら憎んでたはずなのにいつのまにか相棒になって、信頼されるために努力して」
高尾の声が段々弱々しくなると同時にペットボトルが静かに揺れた
「今日、初めてあんなに頼られたんだ」
そうつぶやくと高尾は鼻をすすり、誤魔化すようにペットボトルのキャップをひねった
「…羨ましいって思ったッスよ、」
俺が少し微笑みながらそうつぶやくと、高尾は飲んでいたペットボトルから口を離しながら驚いた顔をして
俺は眼差しを変えずに続けた
「俺、1年の時も1人だったし、…なんつーか、2人に憧れちゃったんスよね、今日」
俺は小さく深呼吸をして「だから負けた!2人のチームワークには勝てなかったッス!」と誤魔化すように大声をあげて伸びをした
すると高尾の足にジュワッとシミが広がるのが見えて
そのシミが落ちてくる間隔が段々と短くなっていった
「…なんで泣くんスか、立場逆ッスよ???」
俺は気がつくと、高尾の背中に手を回していた
「…っぅぇっ、うぁぁ、っ」
高尾は糸が切れたように泣き出して
俺もそれを止めることはなかった
「…最後、だったんだ、今日が、…ッ、…全部、終わったんだッ…」
高尾の口は、そう動いた
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りん(プロフ) - zhenyangjingkouさん» ドキドキだなんて…嬉しいです( ; ; )温かいお言葉ありがとうございます( ; ; ) (2021年1月25日 18時) (レス) id: 6b9a318112 (このIDを非表示/違反報告)
りん(プロフ) - Mさん» いつもいつもいつもいつもありがとうございます( ; ; )( ; ; )( ; ; )これからも末長くよろしくです (2021年1月25日 18時) (レス) id: 6b9a318112 (このIDを非表示/違反報告)
zhenyangjingkou(プロフ) - いつも愉しく作品を読まさせて頂いております。こちらの作品は面白く、ドキドキするところが多いのでいつも読んでいます。これからも頑張ってください!! (2021年1月24日 10時) (レス) id: 6cb8df7d81 (このIDを非表示/違反報告)
M - 更新再開、嬉しいです!まだ読み続けてますからね!頑張ってください! (2021年1月23日 19時) (レス) id: 7323c34b15 (このIDを非表示/違反報告)
りん(プロフ) - ゆまさん» わぁぁ嬉しいです( ; ; )最近忙しくてゴミ更新だったんですけど、今日からまた爆速になるのでご安心くださいっっ!!!! (2021年1月21日 11時) (レス) id: 6b9a318112 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:りん | 作成日時:2020年12月17日 7時