452話 ページ11
Aはスカートを履いて、俺のTシャツが用無しになったと俺に律儀にTシャツを返してくれて
俺に「ありがとう、」と呟いた
ふと、顔を上げたAと目が合う
当たり前だけど、すごく悲しそうな目で
俺がそっと手に触れると、「トイレ行きたい、」と弱々しい声でつぶやいた
こんなに弱ったAを見たのは初めてだ
「たてるッスか?」
俺が立ち上がると同時にAも立ち上がって
割としっかりとした足取りでトイレへ向かった
笠松先輩とアイコンタクトを取ると、「ついていってやれ」と口が動いて
俺もその小さい背中を追いかけた
トイレに向かう廊下の電気をぱちっとつけた瞬間に
今まで暗くてあまり見えてなかったAの顔が鮮明に見えて
「…って、A、口怪我してるじゃないスか!」
その言葉を聞いてピクッと背中を振るわせるA。
俺がアタフタして彼女に近づくと、彼女は力強く指でぬぐって
「…私の、じゃないから、大丈夫」
と目を逸らしながら呟いてトイレへかけていった
Aの血じゃない…、とはどういうことなんだろうと考えて
意味がわかって考えるのをやめた
女子トイレから水を流す音が数秒間聞こえて
Aが鼻を啜る音が聞こえて
俺は歯を食いしばった
こんなに近くにいたのに、守れなかった
今すぐに抱きしめてあげたいのに、女子トイレという理由で入れない
「…っ」
俺は我慢ができなくなって、
「泣くなら1人で泣かないで」とトイレに向かって声を出した
数秒間、沈黙が流れて
Aが涙をこすりながらトイレから出てきた
さっきまで涙は流してなかったから
きっと色々脳が混乱してたんだろーな
安心して涙を流せてよかったと思いながら、出てきた彼女を思いっきり抱きしめた
「…ぐすっ、ぐすっ」
俺の胸のなかで静かに泣いたAが落ち着くまで
腕を解くことをしなかった
しばらくの間そうしていて
Aがそっと俺の胸から体を引き剥がして
小さな声で「…あのね」
と話し始めた
どうしたの、と聞き返したくても言葉が詰まって出てこなくて
Aはゆっくりと顔を上げて、弱々と口を動かした
「キス、してほしいの」
突然の言葉にびっくりして、俺は思わず目を見開いた
「あついの、いっぱい」
「お願い」と言いかけたAの顎を無理矢理俺の方を向かせて、唇を力強く塞いだ
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りん(プロフ) - 湊さん» めちゃくちゃ今更すみません!!このコメント見て調べて声出して笑いました笑笑笑笑ご指摘有難うございます!!書き換えるのしんどいのでこのまま行きます笑本当に有難うございました笑笑 (2021年1月3日 3時) (レス) id: 6b9a318112 (このIDを非表示/違反報告)
湊(プロフ) - インターハイ編って黄瀬達三年生ですよね…?氷室さん一つ年上なので卒業してますよ…? (2020年12月18日 14時) (レス) id: ef148efd04 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:りん | 作成日時:2020年12月6日 11時