43.深まる溝 ページ44
酷く冷たい目でこちらを睨む黄瀬を見て、徐々に落ち着きを取り戻す私
「俺に変わったっていうけど、最初に変わったのはAっすよ」
「わ、私……?」
「自覚ないんすか」
はあと黄瀬のつくため息が重くて、足が震える。手が震える
「Aは昔は水っちみたいに周りの目なんか気にしないでよく笑ってた」
まるで遠くの人物を思い浮かべるかのように目を細めて話す黄瀬
私が……ひなみたいに?
「それなのに、今はしきりに周りの目を気にしてびくびく、びくびく」
「だ、だってっ」
私が黄瀬と話せば、誰かが不快に思う
私が黄瀬と仲良くすれば、誰かが仲良くできない
そう言いたいのに言ってはいけないような気がして口を堅く結ぶ。下唇を噛むようにして、口を閉ざせばより冷たい視線を向けられた
「ほら、すぐに何も言わなくなる。なんで言いたいことをはっきり言わないんすか?」
「い、言っていいことと話すべきでないことがあるんだよ」
黄瀬にはわからないかもしれないけど、と言えばあからさまに彼の周りの空気が変わった
「なんすか?俺が悪いんすか?」
「そ、そうじゃないけど。とにかくっ、黄瀬はみんなのものなんだもん。昔みたいになかよ」
仲良くはできない。そう言葉を繋げようとしたとき、
バアアァァンッ
黄瀬が近くの机を殴った音でその言葉もかき消された
驚きと恐怖で身を固くしていると、はっと嘲るように笑った黄瀬が顔をあげた
「『黄瀬はみんなのもの』?そんなの誰が決めたんすか?」
「だ、誰って」
そんなのはいない。けど、モデルでバスケで人気の黄瀬は周囲からそういう風に見られる。それは世間の暗黙のルールというか
そう言えばいいのに、言葉が出ない
何も言わない私をどう捉えたのか知らないが、黄瀬は言った
「あんたが一番俺を俺として見てねえんだよ」
その言葉に一瞬だけ、息が止まった
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星蛍(プロフ) - せりさん» ごめんなさい!!まだ編集途中で10月に外しますので、少々お待ち下さいm(__)m (2018年9月28日 22時) (レス) id: 3b9001af19 (このIDを非表示/違反報告)
せり(プロフ) - 続編はパスワードつきなのですね…見る事は出来ないのでしょうか?とても面白いので続きが気になります (2018年9月27日 16時) (レス) id: 9c9e090c7f (このIDを非表示/違反報告)
星蛍(プロフ) - きゅうさん» ありがとうございます! (2018年9月18日 7時) (レス) id: 3b9001af19 (このIDを非表示/違反報告)
きゅう - おもしろかったです! (2018年9月18日 5時) (レス) id: fb4f6b02b7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:星蛍 | 作成日時:2018年3月31日 14時