生活費をもらいます。 ページ22
さっきまで十分にとっていた距離。
それが一瞬で消えた。
服の裾を引っ張られて、廊下と玉森さんの部屋の境目に。
わかりやすく言えばドアの居場所。
そこになぜ私が。
A「あの」
玉「裕太ってよびなよ」
あれ、なんか怒ってる?
A「そういうわけにもいかないです」
うわ、玉森さんって背が高いな。
めっ、真の前に鎖骨が。
玉森さん、首元がゆるくありませんか…
玉「わったーのことは渉って呼んでんじゃん」
A「兄のお友達なので」
玉「…じゃあオレも友達なる」
なんだそれ。
A「それはどういう…」
玉「…あーもう」
え?
玉森さんが私の裾を掴んだまま後ろに行く。
つまり結果的に私も移動したので、IN 玉森さんルーム。
うん。
いや、何冷静に分析してんの。
そして玉森さんは私を掴んでない方の手で
ドアを閉めた。
ドアを閉めた…
え、ドアを閉めた?
ドア、閉められた!?
あの、なぜ。
特に逃げる必要もないけど、いざとなれば逃げ場がない。
どうしよう。
…あ。
段ボールがかたづいてる。
さっき千賀くんの部屋、ちらって見えたけど…
片付いてなかったもんな。
迷惑じゃなければ手伝ってあげようかな。
玉「裕太って言うまで、開けてあげない」
はっ!
そうだ、今こーゆー状況なんだった。
また後ろに追いやられ、背後にドアの感触。
目の前にはちょっとかがんで私と目線を絡ませる玉森さん。
ち、近い…
A「た、たまm「ゆうた」うっ…」
なんで。
なんでゆうたって呼ばれたいんですか。
い、いや。今はそれどころじゃない。
藤ヶ谷さんの朝食を作らないといけない。
北山さんを起こさないといけない。
あ、にぃに忘れてた。
にぃにに届け物もしないと。
だから、そう。呼ぶしかない。
A「ゆぅ……たさん…」
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作者名:苺パンダ | 作成日時:2020年3月12日 20時