色欲の公爵 ページ3
いつものように賑やかな空気が流れる町。人々は世間話に花を咲かせたり、買い物をしたり、気ままに歩いたり、各々の日常を楽しんでいる。
しかし、そんな空気を一瞬にして変え、人々の視線を奪った者がいた。
「…まぁ、なんと美しい…」
「貴族様かしら?どうしてこのような町に…」
太陽のように金色に輝く髪とペリドットのような緑の瞳を持ち、煌びやかな服に身を包んだその男は、自分の隣にターバンを頭に巻いた赤い瞳の男を連れ、道行く人々の注目を浴びながら静かに歩いていた。
「……」
男は不意に足を止め、ちらりと噴水の方に…正確には、噴水の前に立つ赤い薔薇の髪飾りをつけた金髪の女性に目を向けた。男と目が合ったその女性は、 気まずくなったのか、すっと男から視線を逸らす。それを見た男はフッ、と笑ったかと思えば、その女性にゆっくりと歩み寄った。
「チャオ、シニョリーナ…」
「え?」
「今日はとてもいい天気だね。君の可愛らしい顔が太陽に照らされて、より輝いて見える…」
男は微笑みを浮かべながら穏やかな口調で女性に囁いた。それを聞いた女性は目をぱちくりさせていたが、しばらくしてクスクスと笑いだした。
「ふふふっ、口が上手いのね!お貴族様ってばみんなそんなご冗談を言うの?」
「とんでもない、俺は本心を言ったまでだよ、ガッティーナ?笑った顔はますます美しい…まるで天から舞い降りた天使のようだ」
男の口から次々と出てくる言葉に女性は口に手を当てて、ますます可笑しそうに笑った。
「もう、おかしな人!まぁそう言われるのも不思議と悪くはないかも。それにしても、どうして貴族様ともあろう人がこんな庶民の町に?」
「少し散歩にね…恥ずかしながら俺は身体が弱くて、生まれてからずっと屋敷に閉じこもっていたんだ。最近は薬のおかげで体の調子も良くなってきたから外の世界を色々見て回りたくて…」
「まぁ…そうだったの…」
はにかむ男に、女性は笑うのをやめて目を見開いた。すると男は突然、女性の手を取って、女性の目をじっと見つめながら言った。
「…シニョリーナ…こうして出会ったのも何かの縁。良ければこの町を案内して貰えないだろうか?」
突然手を握られたかと思えば町の案内をしてほしいと言われて、女性は驚いてぽかんとしていた。しばらく間が空いたあと、女性は困ったように笑いながら口を開いた。
「うーん…そうねぇ…力になりたいけど、私これから…」
「おいコラてめぇッ!!」
「…ッ!?」
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作者名:Choco | 作成日時:2021年1月22日 23時