色欲の公爵7 ページ9
恋人以外の異性と2人になるなんてありえない。
普通ならばそう考えるだろう。しかし、スージーQは迷うことなく彼の誘いを受け入れた。
それは、彼女の心に余裕がなかったからか。
＿＿あるいは、シーザーの妖しげな魅力に取り憑かれてしまったからか。
スージーQはシーザーに連れられて、暗い路地裏へと足を運んだ。
その時になると、洪水のように溢れていたスージーQの涙はもう、落ち着いていた。
「…ごめんなさい、シーザー…私、突然、あんなことを…恋人持ちの…それも、こんな下民の私に好きだなんていきなり言われても…迷惑でしょうね…」
地面に視線を落として、悲しそうに話すスージーQの顎に、シーザーはそっと手を当てる。そして、視線を自分の方へと向けさせた。
「君は下民なんかじゃあないさ、スージーQ。こんなに美しく、気立ての良い女性が下民だなんてとんでもない…それに、俺は迷惑だなんて微塵も思っちゃあいないよ…」
「えっ……？それってどういう……ッ！？」
聞き返そうとした時、スージーQは不意に押し黙った。
＿＿目の前にいる彼が、まるで獲物を見つけた獣のように、ニヤリと口元を歪めていたからだ。
光の点っていない瞳が、スージーQを見据える。
「だってそうじゃあないか…誰かを愛したい、そんな欲求が生まれるなんて、生きているならばごく自然なこと。それを抑えなければならないなんて…一体誰が決めたんだ…？」
「シー…ザー…？」
「俺はね、スージーQ。1人の人だけを愛しなければならないだとか、身分に釣り合った人と付き合わなければならないだとか、そんな愛を縛るような行為は間違っていると思うんだ…」
不気味な笑顔に反して、シーザーの口調は相変わらず穏やかで落ち着いていた。それがかえって、スージーQを震え上がらせたのだ。
「だから、君はただ自分の気持ちに正直になってしまえばいい…自分に嘘をつかずに、自分の思うがままに求めてしまえばいい…
そうすれば、楽になれる」
シーザーはカタカタと小刻みに震えるスージーQの肩にそっと手を乗せ、そのまま自分の方に抱き寄せた。
スージーQはびくり、と身体を震わせる。
怖い、逃げたい。
そう思っているはずなのに、身体は動かない。
それどころか、抵抗しようという気さえ起きなかった。
＿＿こうなることを、自分は心のどこかで望んでいたのかもしれない。
不安で未だに震える中、そんな考えが頭の中に過ぎってしまった。
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作者名：Choco | 作成日時：2021年1月22日 23時
